トラブル報告、価格交渉、歓送迎会のスピーチ……。オフィスや取引先、接待の場で成功するための話し方を達人に聞いた。

Case3.知らない話題をうまくごまかす
誰もがヒヤリとする「知っているべきなのに知らない」単語。知ったかぶりは通用するか。

上司、先輩と3人で話をしていて、「この前、ホールインワン決めちゃってさ」と語る上司に、先輩は「すごいですよ」と盛り上がり、「なぁ」とこちらに振ってきた。自分はホールインワンという言葉さえわからない。

放送作家の田中さんが芸人ノリの作戦を教えてくれた。

「こういうときは、二段構えの大ボケをかましてもおもしろいです。最初に『え、すみません、ホールインワンって何ですか』と普通に返す。すると先輩はきっと『おまえ、そんなことも知らないのか、ほら、ゴルフだよ。一発で入れることな』って言いますよね。そこで畳みかけるように、『そもそもゴルフって何ですか』と二段ボケです。先輩からは『そこからかっ』とツッコミのひとつも入るでしょう。それで場が和み、謎も解けて一石二鳥」

わからないことは正直に尋ねたほうがいいが、今のような話の流れで一段目の質問だけでは逆に場をしらけさせかねない。

「あのう、TPPって、TPOとは違うんですよね」
「TPPは、環太平洋戦略的経済連携協定だよ。新聞読んでないの?」
「あ、はい……」

これでは、上司、先輩がそろってしらけていくのは想像に難くない。

「しかも、話の腰を折ったうえに、こんな常識的なこともわかっていない失礼なヤツと思われるのがオチ。話を止める以上、それなりの礼儀があります。止めるなら、こちらの機転でちょっと盛り上げて返すくらいでなくては」と田中さん。

そこまでボケの技術がなくて、質問もできずにそのままやり過ごせたとしても、挽回のチャンスはあると田中さんは言う。

「わからなかった言葉はメモしておいて、後できちんと調べる。もしその上司との距離を近づけたいと思っているのなら、後日、その話題を持ちだす。
『先日は、不勉強ですみませんでした。これからはTPPをわきまえるように致します』
ここまでやれば、上司もその大ボケを可愛がってくれて、
『だからそれはTPO!(笑)』
とこれまで以上にいじってもらえるはずです。そうすればコミュニケーションもうまくいくでしょう」

もちろんTPPが何かはちゃんと理解することが大切だが、どうせ恥をかいたなら大ボケをかますのも一つの手だろう。