トラブル報告、価格交渉、歓送迎会のスピーチ……。オフィスや取引先、接待の場で成功するための話し方を達人に聞いた。
Case2.移動中の車内で場を和ませる
仕事の話をするだけでは間がもたない。とはいえ共通の話題をどうやって見つければいいのだろう。
部下と一緒に移動中。部下は上司のあなたと一緒なので緊張している。会社でふだん厳しい上司と思われているならなおさらだ。
部下の携帯ストラップに見知らぬキャラクターが付いているのを見た上司。これはチャンスとばかりに、
「これ何?」
「ポケモンです」
「ポケモンって何?」
「あの、キャラです」
「これってどんなキャラなの?」
「まあ、いろいろです」
こんな空回りが続く。
「こういう空しい会話では、若い部下も適当にしか答えません。『どうせ興味ないんだから話しても盛り上がるわけがない』と思われているはずです」(田中)
これでは場が和んだり、距離が近くなったりするどころか、かえって寒い雰囲気になってしまう。
ふだん怖がられているような上司なら、あえて軽い相談や自虐ネタで人間らしさを見せて共感を得る手もある。会社で厳しい上司だと、移動中も小言を言われるのではないかと部下はビクビクしている。
「『これまでの人生でUFOキャッチャーで100万円も使ったよ』というのが私の鉄板ネタです。実際それぐらい使ってしまった私が愚かなのですが、100万円をちょっとでも取り戻そうとネタにして活用しています」(商社・50歳)
普段は怖そうな上司から突然、こんな自虐ネタを振られると、人間的な面が見えて部下との距離が近づくかもしれない。
しかし、あまりにくだらない内容だと、逆に「この上司で大丈夫か」と不安視されることもあるので注意が必要だ。田中さんは「仕事ができないという自虐ではなめられてしまうというのであれば、仕事以外のことで自分の弱みを見せておくのが重要ではないか」と言う。例えば20代の女性部下と一緒にタクシーで移動中に会話が途切れてしまったような場面。