トラブル報告、価格交渉、歓送迎会のスピーチ……。オフィスや取引先、接待の場で成功するための話し方を達人に聞いた。
Case4.苦手な人と会話を繋ぐ
お気楽なご隠居生活ならまだしも、嫌な相手とも話さなくてはならないのがビジネスマンの辛いところだ。
誰でも苦手な人はいる。そういう苦手な相手と話をするとなると、苦痛でしかない。達人たちに苦手な相手はいるのか。
アサヒビールの伊藤さんは「苦手な人は、100人中1人くらいじゃないですか。でも仕事なのでそこは仕方ありません」と大人の対応。
ただ、こちらの思いが届かない結果、苦手になるケースもあるという。
「自分では何とも思っていなくても、逆に相手から冷たくされてしまうと辛いですね。例えば前任者と比べられて、あまりいい対応をしてもらえないとか、まるで空気のように相手にされないとか。それでも好きと思って、会う回数を増やします。一瞬でもにこっと笑ってくれたら、ガッツポーズですよ」(伊藤)
エステーの鹿毛さんは、「そりゃ、いますよ、苦手な人は。でも『苦手な人』とは、どういう人なのか、自分の中で定義づけをはっきりさせるべきです」
確かに、ちょっとでも嫌なことがあると、何でも「あの人、苦手」で片づけてしまいそうだ。
鹿毛さんはどういう定義づけをしているのだろう。
「物事に対する感度が合わない人っていますね。例えば、自分は仕事が速いとすると、コツコツ慎重に仕事を進める人はどうも性に合わないと考えがちです。もっと速くやれよと苛々するかもしれない。でも自分と感度が合わない人とか、仕事の仕方が違う人は、苦手とは違うんです。むしろ、チームの中に入れておかなきゃいけない大切な人なんです。同じように、自分は酒が飲めるから、飲めないヤツは苦手なんて思ってはいけない。それは単なるスタイルの違い。好きだと思って接していれば慣れてくる」
自分がアクセルのような人間なら、ブレーキのような人間とは、気が合わないかもしれないが、例えばプロジェクトを進めるうえでは理想的なコンビネーションなのだ。
こういうスタイルの違いにまで苦手意識を持ってしまうと、結局は自分の損になると考えたい。実はありがたい存在なのだ。