目指すべきは「話し下手」上手

伊藤さんによれば、人見知りでも「相手に興味を持つこと」で状況は変わる。「相手の目を見て話すようになり、うなずきっぱなしではなくなる」そうだ。

消臭剤のCMで「ショーシューリキー」と美声を聞かせるミゲル君など人気CMを次々に仕掛けるエステーの宣伝部長、鹿毛康司さんは、「ギャグを言えない人間がギャグを言おうとするから失敗する。芸能人になりきる必要はない。自分も人前に出るのが苦手だったが、自分を出せばいいと思ったら、ふっきれた」と話す。

そもそも、話し下手という発想自体が間違っていると鹿毛さん。

「話し下手を克服するのではなくて、利用すればいいんです。『あの、私、話し下手なもので』とか『すみません、緊張していて何を言っていいのかわからなくなってしまって』と素直に伝える。そうやって弱みを見せた人間に対して、相手が『ふざけんな、こら』と怒り出すと思いますか。一生懸命話そうとしている気持ちが伝わって、相手も悪い気にはならないはずです」

しかも、話し下手には、もっと大きなメリットがあるという。

「話し下手だったら、聞けばいいんです。可愛がられますよ。話し下手でも、相手の話にリアクションはできるはず。行動で見せればいいんです。それこそが、会話を超えたコミュニケーションじゃないですか。話し下手なら話し下手なりにリアクションを磨く。いわば“『話し下手』上手”になることです」(鹿毛)