本当に必要な食料安全保障政策
食料安全保障のための対策はある。仮に、日本の水田面積の全て(4割の減反面積の回復)にカリフォルニア米ほどの単収のコメ(単収1.6倍)を作付けすれば、長期的には1700万トンのコメを生産することができる。単収が増やせない短期でも、1000万トン程度のコメは生産できる。国内仕向けを700万トンとすれば300万トンを輸出できる。
日本米を300万トンも輸出できないという意見も聞く。だが、トヨタが自動車をアメリカに輸出し始めた時に、日本車はいまと同じくらい海外に輸出されていたのだろうか。日本のコメの品質の高さを侮ってはいけない。問題は価格が高いことなのだ。自動車に例えるとレクサスどころかロールスロイスに相当する日本のコメが価格競争力を持てば、世界のコメ市場を席捲できる。まさに鬼に金棒である。
減反を廃止し、国内需要を上回るコメを生産して、平時には輸出する体制を築いておけば、24年から25年にかけてのように国内で40万トン不足しても、輸出分を国内に振り向けることで対応できる。そうした体制があれば、今回のコメ騒動は防げた。
最も効果的な食料安全保障政策は、減反廃止によるコメの増産と輸出である。平時にはコメを輸出し、食料危機時には輸出に回していたコメを食べるのだ。平時の輸出は、財政負担の必要がない無償の備蓄となる。これがアメリカ、EUなどが行っている食料安全保障政策である。輸出余力のある国では、危機時に輸出分を国内に振り向けられる。輸出が備蓄の役割も果たすのである。
増産したコメを平時には輸出し、危機時には国内へ振り向ける体制が整えば、現在の政府備蓄米制度に頼る必要はなくなる。100万トンの備蓄どころか、単収が増えれば1000万トン万トンの備蓄を実現できる可能性がある。
80年代EUも日本と同様に農産物価格を上げたので過剰処理に悩んだ。日本が減反で過剰を回避したのに対し、EUは、生産は抑制しないで、できた過剰農産物を補助金付きで国際市場に輸出した。今は直接支払いによって域内農産物の価格水準を引き下げたので、補助金がなくても輸出できる。国内で消費する以上に生産して輸出すれば、国内生産を国内消費で割った食料自給率は100%を超える。
減反を廃止すれば、減反補助金や備蓄などに要している4500億円の財政負担は解消される。主業農家への直接支払いは1500億円で済む。国民は納税者としての負担を減少し、なおコメを安く消費できる。食料自給率は60%以上に上がる。
産地の知事が本気で食料安全保障を考えているなら、100万トンのコメの備蓄が必要だなどスケールの小さいことを言うのではなく、減反廃止を農水省に要求すべきではないか。生産を“減らそう”ではなく“増やそう”とする方が、生産者の意欲や創意工夫も刺激する。それが産地農業の活性化にもつながるのではないか。
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