いままでにない「農業界の要請」
しかし、史上最高値の25年産米価より26年産米が3~4割下がったとしても依然23年産米を5割も上回る高米価である。おおむね2005年以降、農水省やJA農協は減反によって実現したい目標価格を、JA農協が卸売業者に販売する際の玄米60キログラムあたりの相対取引価格を1万5000円(農家手取り1万2000円)としてきた。
1万5000円という価格が明らかにされてきたわけではないし、これに何らかの積算根拠があるわけでもない。しかし、かれらは米価がこれを下回ると減反を強化して、これを実現しようとしてきた。暗黙のコンセンサスが形成されていたと言ってよい。1万5000円が減反の目標価格であり、それ以上は望まなかった。このため、ほぼ20年間、米価がこれより上方に大きく乖離することはなかった(2023年までの19年間で1万5000円を上回ったのは8年、1万6000円を超えたのは1年だけ)。
この価格に見合う需要(700万トン)を予測し、生産可能数量(1000万トン)をそれまで減少させてきた。これが“需要に見合った生産”である。例えば、21年産の米価1万2804円は低すぎたので、彼らは22年産、23年産について減反を強化した。主食用米の作付面積は、21年130万ヘクタールから23年124万ヘクタールに減少した。こうして実現したのが23年産の米価1万5315円だった。
「米価暴落」は起きていない
米価下落の不安というが、コメ騒動以前は1万5000円でコメ業界は満足していたのである。しかも、過去2年間コメ農家はバブル状態だった。1万5000円までの価格低下は受け入れられるのではないか?
これまでも米価が下がると零細農家は農地を貸し出し、賃料を得るように経営方針を転換して、規模拡大が進んだ。肥料価格の高騰とか主張されるが、それがコメ供給の大宗を担う大規模経営まで含めて、コメを生産できなくなるほど生産コストが引き上がっているのか。農水省が公表している交易条件指数(農産物価格と生産資材価格の比率)は2020年を100として2025年は109.8と約10%も改善している。検証責任は産地の知事など生産者側にある。
マスコミの記者は農水省や産地の知事の言い分を額面通りに受け取るのではなく、ファクツやデータによりクールに分析して報道することが必要である。特に、バブル米価を基準に「米価暴落」などという評価はしないでもらいたい。


