なぜ「高くて古いコメ」を買い戻すのか

コメには伝統的に二つの高米価政策がある。

一つは「生産前の減反(コメ作付け面積減少)」であり、一つは「生産後の政府買い入れ(価格低下圧力となる過剰在庫解消)」である。いずれも財政(納税者)負担によって供給を減少させて米価を高くし、消費者負担を高めようとするものだ。国民や消費者の視点はない。

今回買い戻しをしようとする一般競争入札で売り渡したコメ(江藤拓農林水産大臣〔当時〕が在任中に放出した米31万トン)は23年産と24年産である。買い戻し期限は5年もある。備蓄米水準の回復というが、なぜ米価が異常に高騰した25年産米で買い戻そうとするのか? 米価が落ち着くだろうと思われる26年産、27年産まで待てば、場合によっては国に差損ではなく差益が生じる可能性があった。コメ騒動が起きる前は精米5キログラム1500円~2000円で購入していた(図表1参照)。今の値段は、その約2倍もしている。

在庫がジャブジャブと言っていい今、コメ騒動が起きることはない。食料安全保障の見地と言ってもあわてて備蓄米の在庫を回復する必要はない。足りなくなって米価が上昇すれば、コメは民間の在庫から出ていくだけだ。

過去の農水省の価格安定対策は、過剰で安くなったときに買い入れ、不足して高くなったときに放出するものだった。今回は過剰で高くなったときに買い入れるという、私の人生で一度しか出会えないような事態である。

政府は、供給量を確保できる見通しが立ったため、食料安全保障の観点から備蓄を計画的に回復すると説明する。しかし、私はこの買い戻しの実質はJA農協の救済だと考える。高い概算金を生産者に払った結果、高い米価でしか処分できない25年産米を大量に抱えたJA農協の在庫を、政府が引き取ることになるからだ。

30kgの紙袋で保管される政府備蓄米
30kgの紙袋で保管される政府備蓄米(写真=農林水産省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

生産県の知事たちの本音

食料安全保障はとってつけた理由で、本音の理由は21万トンでは過剰在庫の解消には不十分で米価がさらに低下するかもしれないという心配だ。

産地の知事は、コメ生産者やJA農協の意向を無視できない。生産者としては少しでも価格が下がるのは嫌だ。したがって、もっと買い増し量を増やすべきだと言う。ただし、26年産21万トンは既に入札終了、25年産21万トンを9月18日に随意契約で買い戻すとしているので、備蓄目標100万トンまで買い付けられる残りの量は26万トン~58万トン(現在ある古い備蓄米32万トンを全量直ちにエサに処分した場合)となる。26年産が大幅な生産増加と予想されるので、58万トンでも期待したほどの米価下支え効果はないかもしれない。