マルチタスクしながら集中力が途切れない方法はあるか。研修会社らしさラボ代表の伊庭正康さんは「マルチタスクが許される、ただ1つの条件は、『無意識にできるまで熟達すること』だ。この無意識にできる、何も考えていないボーッとしている時は、ワーキングメモリをほぼ使っていない状況である。自動車の運転のように、『クラッチを踏んで、シフトレバーを動かしながら、ハンドルを回す』という最初は曲芸のように感じる複雑な操作でも、慣れてくると、無意識に運転できるだろう」という――。
※本稿は、伊庭正康『やる気ゼロからフローに入る 超・集中ハック』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
13人の注文を1人でさばく人の「頭の中」
本書では、マルチタスクは徹底して排除しましょう、ということをお伝えしてきました。
でも、これだけでは説明がつかないことがあります。
かつて、私の母親は喫茶店を営んでおりました。
今でも覚えているシーンがあります。バラバラの13人分の注文を、1人でさばいていたのです。
オムライスを炒めながら、もう1つのフライパンでパスタを炒め、後ろのトースターでトーストを焼き、同時並行で、コーヒーを淹れながら、さらに注文を受ける……。
まさにマルチ(複数)タスクをしていました。
実は、マルチタスクが許される、ただ1つの条件があるのです。
それは、「無意識にできるまで熟達すること」。
無意識にできるまで熟達すれば、マルチタスクの方が生産性向上につながります。
説明します。
この無意識にできる時、何も考えていないボーッとしている時の状態は、いわゆるDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)に入っています。
ワーキングメモリをほぼ使っていない状況と考えると、わかりやすいでしょう。
自動車の運転もそう。
クラッチを踏んで、シフトレバーを動かしながら、ハンドルを回す……。
最初は曲芸のように感じる複雑な操作でも、慣れてくると、無意識に運転できるようになるでしょう。この状態であれば、マルチタスクもOKというわけです。