マルチタスクしながら集中力が途切れない方法はあるか。研修会社らしさラボ代表の伊庭正康さんは「マルチタスクが許される、ただ1つの条件は、『無意識にできるまで熟達すること』だ。この無意識にできる、何も考えていないボーッとしている時は、ワーキングメモリをほぼ使っていない状況である。自動車の運転のように、『クラッチを踏んで、シフトレバーを動かしながら、ハンドルを回す』という最初は曲芸のように感じる複雑な操作でも、慣れてくると、無意識に運転できるだろう」という――。

※本稿は、伊庭正康『やる気ゼロからフローに入る 超・集中ハック』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

レストランで軽食を運ぶ従業員
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

13人の注文を1人でさばく人の「頭の中」

本書では、マルチタスクは徹底して排除しましょう、ということをお伝えしてきました。

でも、これだけでは説明がつかないことがあります。

かつて、私の母親は喫茶店を営んでおりました。

今でも覚えているシーンがあります。バラバラの13人分の注文を、1人でさばいていたのです。

オムライスを炒めながら、もう1つのフライパンでパスタを炒め、後ろのトースターでトーストを焼き、同時並行で、コーヒーを淹れながら、さらに注文を受ける……。

まさにマルチ(複数)タスクをしていました。

実は、マルチタスクが許される、ただ1つの条件があるのです。

それは、「無意識にできるまで熟達すること」。

無意識にできるまで熟達すれば、マルチタスクの方が生産性向上につながります。

説明します。

この無意識にできる時、何も考えていないボーッとしている時の状態は、いわゆるDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)に入っています。

ワーキングメモリをほぼ使っていない状況と考えると、わかりやすいでしょう。

自動車の運転もそう。

クラッチを踏んで、シフトレバーを動かしながら、ハンドルを回す……。

最初は曲芸のように感じる複雑な操作でも、慣れてくると、無意識に運転できるようになるでしょう。この状態であれば、マルチタスクもOKというわけです。