逆風の中でも新機軸を打ち出し続ける

コロナ禍は外食産業への大変な向かい風となっている。だがそのなかにあっても、逆風をかいくぐり業績を拡大している一群の外食企業がある。

創業時からの根強いファンに支えられてきたモスバーガーが、新規顧客開拓に本腰を入れた――。動物性食材などを使用しない“環境と身体に優しいバーガー”第2弾、「グリーンバーガー<テリヤキ>」
写真=PR TIMES/モスフードサービス
創業時からの根強いファンに支えられてきたモスバーガーが、新規顧客開拓に本腰を入れた――。動物性食材などを使用しない“環境と身体に優しいバーガー”第2弾、「グリーンバーガー<テリヤキ>」

モスバーガー(モスフードサービス)はそのひとつであり、コロナ禍の下でも売り上げを着実に伸ばしている。全店売上高を対前年度比で見ると、2020年度上期(4~9月)が3.5%、2020年度下期(10~3月)が10.8%、2021年度上期(4~9月)が13.3%の伸びとなっている(モスフードサービス企業サイトの「IR情報>IRライブラリー>月次情報」より)。

ファストフードは、コロナ禍を乗り切りやすい業態とされる。たしかにモスバーガーのように、そもそも持ち帰りや宅配に適したメニューが多く、家族客向けで、酒類の販売がなく、住宅街にも店舗が多いチェーンは、コロナ禍の日々に適応しやすかったといえる。とはいえ、これは一面であり、あらゆるファストフード・チェーンがコロナ禍の下で業績を伸ばしているわけではない。

2020年に始まったコロナ禍以降も、モスバーガーでは「まるごと! レモンのジンジャーエール」や「日本の生産地応援バーガー 真鯛カツ<愛媛県愛南町>」(いずれも2021年5月より発売開始)などの数量限定/期間限定商品のヒット、モバイルオーダーの強化、ロボット配膳の試行など、目が離せない動きが続いた。しかし、モスバーガーでマーケティング本部長を務める安藤芳徳氏は、変化の絶えない日々のなかにあっても、目先の顧客獲得に動くことはなかったという。

コロナ禍のなかでの一進一退はあっても、モスバーガーの業績拡大が止まらないのはなぜか。それは同社が自らの「なりたい姿」を見定めており、揺らぐことのないビジョンの下で活動を積み上げていくことができているからである。