また、選手起用法にも独自の哲学がある。1年目の最終戦にはスタメン15人のうち新人を9人起用して会場を唖然とさせた。今年も開幕戦からトップリーグ最強と言われたプロップ池谷陽輔を外しルーキーの畠山健介を起用している。

「もちろん、ポジション争いに勝ったからですよ。ほかのルーキー3人も試合に出ているし。外から見てどこか足りないと思っても僕は気にしない。逆にひとつでも持ち味があればチャンスはある。僕は自分の持ち味を出してチャレンジする“空気”を大切にしたいんです。だから、第10節ぐらいまではメンバーを固定せず、いろんな可能性を試すつもりです。去年も45人いるメンバーの36人が(一軍の)Aチームを経験している。これはどのチームより多いと思います」

練習や控えのサテライトではなく、Aチームの試合こそ、選手を見極めるチャンスなのだ。思うような結果を残せないタイプと驚くほど成長する個性もある。

写真の左から2人目が今年からチームに加わったジョージ・グレーガン選手。

写真の左から2人目が今年からチームに加わったジョージ・グレーガン選手。

今年、サントリーには元豪州代表主将のジョージ・グレーガンが加わった。世界最多139のキャップ数を誇る世界のスーパースターが出場するということで、開幕戦の秩父宮には約1万5000人が集まった。しかし、結果はライバルの三洋電機に19対9で敗れる。

「メディアにはいってないけど、試合後、選手に謝りました。初めて勝ちにこだわらない試合をしてしまった。申し訳ない。これからは自分らしくやりたい、と」

これまで、清宮は競争に勝った選手を使うという信念を貫いてきた。合宿には参加したが、私用で帰国し開幕前日に再合流したジョージを起用することは、そのサントリーの掟を破ることである。実際、チームにフィットしている感じではなかった。しかし、ジョージを見にくるファンを思うと出さないわけにはいかない。悩みながらの決断だったが、潔く自分の非を認める彼の人柄が人を引き付ける要因だろう。第2節以降はチームがうまく機能し始め、勝利を重ねている。(文中敬称略)

(長岡洋幸=撮影)