清宮という人間は、どちらかというと経営者タイプだ。理想を追いながら現実的に物事を処理していく。1995年に総務部から移動した営業部では、本来、寡黙で酒も飲めない下戸だが、トップセールスマンに上り詰めた。たとえば30店舗を担当し年間3億円の売り上げなら、平たく全店に足を運ぶのではなく、売り上げから上位数店舗に集中し、そこで売り上げを伸ばす策を考えたのだ。
「夕方から練習があるし、僕には時間がない。無駄なことはしませんよ。だいたい僕、努力が嫌いなんです(笑)。練習にしても、最低限の練習で結果を出したいから工夫するんです」
優秀な戦略家というのは、早稲田大学から続く監督7年間で、毎年、ファイナルに進出してきた事実も実証している。去年はシーズン途中からチームにプレー面で迷いが生じ、空中分解しそうな空気を孕んだ。すると彼は、迷うことなく方向転換し、シンプルに勝ちにこだわるラグビーを決意。強力なフォワードを前面に押し出し、時間を有効に使い、ゲームを有利に進めた。
「サントリーはどうやって勝つのか、そこに僕はこだわり続けるべきだと思う。そういう意味でいえば、去年の戦い方も、そのひとつだったわけですよ。確かに賛否両論ありました。結局、タイトルはとったけど、ファンが期待する“ボールが動くラグビー”じゃなかった。フェアじゃないとまでいわれてね。でも、あのときはあれがベストだと思ってやったわけですよ。いつか通らなければならない道だったと思うし、いい経験になりました」
その反省から今年はジョージを獲得した。試合が膠着したとき、不利な展開でのプレーや統率力への期待は、将来のための生きた教材でもある。サンゴリアスは確実に進化している。
「柔道でいえば、去年はポイントを取りにいったラグビーでしたけど、今年は、アグレッシブに一本勝ちを狙います。僕が監督になって3年目、今年のサントリーは違うという試合を見せますよ」(文中敬称略)