※本稿は、キャシー松井『ゴールドマン・サックス流 女性社員の育て方、教えます 励まし方、評価方法、伝え方 10ヶ条』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
アメリカでも「能力が高い女性は嫌われる」
旧来の「男らしさ」「女らしさ」にまつわる無意識バイアスが、多様な人材をマネージメントする際に厄介な障壁となりうることは、アメリカでジェンダー研究をしている研究者からはたびたび指摘されてきました。男性側に固定的な性別役割分担というバイアスがあることは前述したとおりですが、それだけではありません。当の女性自身も旧来から求められてきた「女性らしさ」に縛られてしまうことが少なくないのです。
女性に対しては様々なバイアスがあることが知られていますが、なかでも厄介なのは、「能力が高い女性は嫌われる」というもの。日本でもこうした傾向があると思いますが、これは比較的女性の進出が進んでいるアメリカにもあります。
女性も「成功した女性」に好感を持たない
このバイアスに関しては有名な研究結果が報告されています。コロンビア大学ビジネススクールのフランク・フリン教授とニューヨーク大学のキャメロン・アンダーソン教授が2003年にある実験を行いました。実在する女性ベンチャー・キャピタリストの「強烈な個性の持ち主で……幅広い人脈を活用して成功した」というエピソードを、2つのグループの学生に読ませるというものです。ただし片方のグループにはこの女性の名前を伏せて、男性名で示しています。
このエピソードを女性のストーリーとして読まされた側の学生たちは、この女性を「自己主張が激しく自分勝手」であるとして、同僚として好ましくないとの評価を下しています。ところが、男性名でこのエピソードを読んだ学生たちのグループは、同僚として働くのに好ましい人物として評価するという結果が出ています。
不思議ですね。違っているのは性別だけなのに、人はこれほどまでに違う印象を抱きます。つまり、成功している男性には好感を持ち、成功した女性に対しては好感を持たないのです。実験からわかるように、これは男性だけの感情ではありません。女性であってもそうなのです。