2019年、ゴールドマン・サックス証券はカジュアルウェアを解禁した。今ではジーンズで出勤する人もいる。副会長のキャシー松井氏は「私たちは世界的なIT企業と優秀な人材をめぐって争わなければならない。ドレスコードで負けるわけにはいかない」という――。

※本稿は、キャシー松井『ゴールドマン・サックス流 女性社員の育て方、教えます 励まし方、評価方法、伝え方 10ヶ条』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

フォトグラファーのブラックとホワイトのフィルタ
写真=iStock.com/kolaybirsey
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GAFAにドレスコードで負けるわけにはいかない

2019年、ゴールドマン・サックスはその150年の歴史の中で初めてドレスコードを変更して、「フレキシブル・ドレスコード」、つまりTPOをわきまえたうえでのカジュアルウェア解禁となりました。最初は恐る恐るだった社員も、今では当たり前のようにジーンズで出勤しています。サンフランシスコやシリコンバレーのテクノロジー企業ではスーツを着た人を探すほうが難しいかもしれません。世界的なIT企業のグーグルやアマゾンと優秀な人材をめぐって争わなければならない私たちにとっては、ドレスコードで負けるわけにはいきません。

先日、当社の広報スタッフから「キャシー、公式ウェブサイトに使うあなたのプロフィール写真を撮り直したいのですが」とオファーを受けました。前の写真を撮ってからだいぶ時間が経っていたので、更新の時期が来たのかなと思っていました。しかしほどなく、写真を撮り直していたのは私ひとりではないと気が付きました。ニューヨーク本社をはじめ、全世界の役員すべてのプロフィール写真が次々と新しくなっていたのです。

「マッチョで古い業界」と思われないために

役員の新しいプロフィール写真は、オフィスの窓際などカジュアルな雰囲気の場所で、男性の多くはノーネクタイ、女性も柔らかな色合いの服装で、にっこりと親しみやすい表情を浮かべた写真が選ばれているように感じました。

広報スタッフによれば、それはドレスコードの変更とも関係しているそうです。よりソフトな印象の写真には、人間らしい温かみを感じます。以前のプロフィール写真はパスポートにでも使われるようなブルーの背景に、金融業界らしくかっちりしたスーツ姿で真面目な表情をしたものがほとんどでした。それではいかにも堅いというか、マッチョで古い業界というイメージを若い世代に持たれてしまうのではないか。2018年、新たに当社CEOに就任したデービッド・ソロモン(彼はクラブミュージックのDJとしても活動しています!)はそうした危惧きぐから、自社イメージの刷新に踏み切ったようです。