キャリアは「梯子」ではなく「ジャングルジム」

前出のフェイスブックCOO・シェリル・サンドバーグ氏は著書のなかで、キャリアは上へ真っ直ぐに伸びる「梯子はしご」ではなく「ジャングルジム」だというコンセプトを広めています。学校を卒業してからリタイアするまで、予測可能な階段を上がっていくというより、水平に動いたり、予想外のジャンプをするのが「ミレニアル世代」のキャリアに対する意識だといえるでしょう。

〈英語では、出世はよく梯子に喩えられる。だがこれは、もはやほとんどの人に当てはまらない。2010年の時点で、平均的なアメリカ人は18~46歳の期間だけで11の仕事を経験している。つまり、一つの企業なり組織なりに就職し、そこで一本の梯子を上っていく時代はとうの昔に過ぎ去ったのである。(中略)。

梯子には広がりがない。上るか下りるか、とどまるか出て行くか、どちらかしかない。ジャングルジムにはもっと自由な回り道の余地がある。梯子の場合、上りは一本道だが、ジャングルジムならてっぺんに行く道筋はいくつもある。ジャングルジム・モデルは誰にとってもメリットがあるが、女性にとってはとくに好ましい。これなら、就職、転職は言うまでもなく、外的な要因で行く手を阻まれたときも、しばらく仕事を離れてから復帰するときも、さまざまな道を探すことができる。ときに下がったり、迂回したり、行き詰まったりしながら自分なりの道を進んで行けるなら、最終目的地に到達する確率は高まるにちがいない。それにジャングルジムなら、てっぺんにいる人だけでなく、大勢がすてきな眺望を手に入れられる。梯子だと、ほとんどの人は上の人のお尻しか見られないだろう。〉

(『LEAN IN(リーン・イン)女性、仕事、リーダーへの意欲』シェリル・サンドバーグ著、村井章子訳、日本経済新聞出版社、2013年、P76)

梯子よりもジャングルジムをイメージしてキャリアを積んでいく世代が増えるなかで、企業はどのような努力をして人材をつなぎとめていけばいいのか。私たちゴールドマン・サックスは、これまで紹介したような女性の活躍推進をサポートする制度だけでなく、さまざまなバックグラウンドを持った社員が自分の能力を発揮できる仕組みを設け、さらにそれを地域ごと、時代の変化に合わせて刷新を繰り返しています。実際に利用する社員の意見も反映されるように、アンケートや聞き取り調査、グループミーティングも実施しています。