あの味の濃い野菜を子供にも
都会暮らしを送る中で、ビジネスパーソンが職場でも家庭でもない「第三の居場所」を求める。どんな例があるだろうか。
まずはアウトドア編といこう。自然と触れ合うパターンの居場所には、畑仕事や釣りなどが考えられる。農家ではない一般の人が都会で畑仕事をするには、自治体が関与する区民農園や市民農園を借りるという形がある。
ところが区民農園や市民農園の場合は、一般に農地よりも希望者数が多く、抽選を経ないと利用できない。また、年度をまたいで利用し続けることができない仕組みになっていることが多く、勤め人には使いにくい。
そこに目を付けたのがアグリメディアというベンチャー企業だ。同社は「シェア畑」というブランドで、全国に100カ所近くの小規模な貸し農園を展開している。
利用者の声を聞くことができた。場所は東京都葛飾区のシェア畑である。取材日はあいにくの曇り空だったが、晴れたらさぞ気持ちいいだろうと思われた。
「ここに来て、土と触れ合うようになってから、よく笑うようになりました。職場の後輩からも『やさしくなりましたね』と言われます」
大手家具チェーンの東京本部でバイヤーを務める後藤光輝さん(49歳)がニコニコ顔でそう言った。後藤さんは畝が4つほどのシェア畑の小さな一角で、2019年5月からサークル仲間の丹羽春海さん(48歳)と一緒に野菜を栽培している。
「1年半前に離婚してシングルファーザーとなり、子供3人(現在は高校3年と2年の女子、中学1年の男子)を引き取ってから、食の安心・安全が気になりだしました。当時は朝からレトルト食品といった不摂生な生活。それを変えたいと思ったのです」
「食」を追求する自己啓発サークルに入り、知ったのがこの畑だった。