経済界も芸能界も腰が低いと好かれる

「会社の社長のような偉い人たちは、人から頭を下げられることはあっても、人に頭を下げることは少ないだろう」――世間一般の人は、そんなイメージを持っているのではないでしょうか。しかし実際には、むしろその逆。社会的地位が高い人ほど、よく謝り、謝り方もうまいケースが多いんです。

放送作家・PRコンサルタント 野呂エイシロウ氏

会社のマネジメント層なら、部下が仕事でミスをしたり、取引先とトラブルになったりしたとき、一緒に謝りに出向くことがありますよね。昇進して部下が増えれば増えるほど、謝る機会も増え、場数を踏んで鍛えられるのです。会社のトップなら、謝る回数もトップクラスのはず。謝罪会見などで社長が深々と頭を下げる姿を、TVなどでよく見かけるでしょう。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉は、まさにその通りだと思いますね。

もちろん、すべてのトップが「謝り上手」というわけではありません。社長の中にも「謝り下手」の人がいるし、最近不祥事続きの大学のトップも、謝るのに不慣れな人が目立ちます。なかでも、政治家は人気商売にもかかわらず、ビックリするほど謝るのが下手。エリートコースを順調に進みすぎて、苦労知らずなのかもしれませんね。

けれども、PRコンサルタントとして、さまざまな企業のトップを見てきた僕は、こう断言できます。「謝り上手の人なら、どこに行っても信用を得て、着実に出世する」と。超一流のトップは、謝り方も超一流です。というより、人間ができていて謝り上手だから、成功できたのかもしれません。

僕は長年、放送作家の仕事もしていますが、芸能界でも謝り上手でないと、周りから愛されず、生き残っていけません。謝るのがうまい有名タレントの代表といえば、お笑いコンビ、キャイ~ンのウド鈴木さんでしょう。一緒に仕事をしているとき、悪いことをしていなくても、彼は「すいません、すいません」と何度もいいます。逆に、ウドさんが仕事場で怒られているところを、僕は1度も見たことがありません。

経済界の謝り上手を挙げるなら、ライフネット生命保険元会長の出口治明さん。自分の間違いに気づけば、僕みたいな人間にでも、即座に謝ります。若手のベンチャー経営者では、ビズリーチ社長の南壮一郎さんもマメに謝りますね。先日、南さんにお目にかかったとき、お互いに会釈しかできなかったんですが、南さんから「きちんとご挨拶できなくて、すみませんでした」と、すぐにSNSで連絡が来ました。