雑談から本題へ、会話の流れをつくる
老舗店の一流の常連客は、代々その店を贔屓にしているものです。幼少の頃から大人たちのふるまいを見て育ち、自分の親たちと店との歴史を背負ってその店を利用しますから、自分がお金を払う立場だからといって店の方に対して偉そうな態度は絶対にとりません。
料理を「食べさせて+いただく」、商品を「買わせて+いただく」という気持ちを持って「美味しかったわ、ごちそうさま」とか「届けてくださってありがとう」など、素直に感謝の意を伝えますし、心づけを渡すこともあります。お店の方であって親しい知人でもある、そんな関係性を代々保ち続けているのです。最近では百貨店や複合施設でなんでも揃いますが、呉服でもメガネでも、わが家では代々お願いしている専門店で購入します。
そうした日ごろからの店との関係性ができていますから、馴染みの老舗料理店で食事をする際の支払いは後日払いがほとんどです。お客様をご招待するときには、事前にお店に会の概要やどんな方がいらっしゃるのかをお伝えしながらお料理の相談をしますよね。ですから、そのときに予算をお伝えして支払いを済ませてしまうこともできると思います。いずれにしても、会計でもたもたしないよう、会食当日の支払いはしません。
こうした関係は一朝一夕では築けませんが、どんな店でも、できるだけお客様に支払いのことを気づかせないようにすることはできるのではないでしょうか。個室を利用すればお客様から見える場所での支払いを避けられますし、事前に店に依頼しておけば、お料理の値段が記載されていない接待用のメニューを用意してもらうこともできるでしょう。
カジュアルな店で、接待用メニューがない場合もあるかもしれません。それでも私なら「カジュアルな店で失礼ではございますが、お好みをおっしゃってください。ここの店は○○や○○や○○などが美味しいんですよ」と、お客様に情報をお伝えしてお好みをうかがったり、店の方にお願いしてテーブルでお勧めをいくつか説明していただいたりして、お客様に値段が書かれたメニューをお見せすることはできるかぎり避けると思います。
お客様に値段が書かれたメニューをお見せしてしまうと、遠慮をされて安価なメニューを選ばれるかもしれません。また、フレンチなどでわかりにくいメニューだったときにお客様に恥をかかせてしまうこともあるかもしれませんから、会計時以外でも、招待する側は配慮すべきです。