「香りを言葉で」は、やらないほうがいい

接待や会食など、仕事上の交流の場にワインを介するケースが年々増えていると実感されている方も多いでしょう。それゆえ、ワインとその周辺に関するご自身の知識や経験に不安を覚えるのかもしれません。

ワインアンドワインカルチャー代表 田辺由美氏

しかし、知らないことじたいがマナー上悪いことでも何でもないと思いますし、ワインの知識よりも箸の使い方のような基本的なことを知っておけば、何とかなります。

もっともマナーは、知っていて崩す分にはよいのですが、最初から崩れているのはあまりに世間知らず。あとは雰囲気を見ながら相手に合わせていくものだと思っています。

まずレストランに限っていうと、ワインにはビールやウイスキーのような“お酒を飲む”という感覚を持たぬことが大事。あくまで食事をおいしくするもので、酔うためのものではないのです。一般に、初対面の方やビジネスの席では、基本的に政治と宗教の話はNGとされていますので、目の前にあるワインが会話の糸口を見いだす一助ともなります。

見栄を張って知ったかぶりをするよりも、ソムリエや同席している詳しい方に「おいしいワインですね。どちらのでしょうか?」と国や地域を聞くか、「どんなブドウを使っていますか?」などと尋ねるのが無難なスタートです。相手がワイン好きの方なら、喜んで詳しく解説してくれるでしょう。このとき我々のようなプロはワインの香りをいろんな言葉で表現しますが、接待の場ではあまりやらないほうがいいと思います。

飲み物を出す順序は最初にスパークリング、そして白、その後に赤。お好みならば、さらにブランデーやシェリーのような強めのお酒を食後酒に持ってきても構いません。

料理に合わせて、味わいの軽いほうから重いほうへと流れていくのが基本ですが、もちろんそれぞれの好みに合わせてスパークリングを飛ばしてもいいですし、赤まで飲まなくても大丈夫です。

魚介料理には白が合うと言われるのも、魚介料理は軽めのさっぱりした調理法や味付けが多いからなのですが、例えば魚介類が濃い目の赤ワインソースで調理されているような場合には、赤ワインを選んでもいい。基本を知りつつも、そのとき同席している方々と一緒に柔軟に選べるのがワインの魅力なのです。