相手の意見を「それいいね」と受け入れた後、「でもね」と否定する人がいる。ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏は「そういう人とは付き合わないほうがいい。足を引っ張られるだけだ」と指摘する。2014~15年まで米スタンフォード大学の客員研究員を務めた同氏が、ある日に受けた授業の一部を紹介しよう――。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/stockstudioX)

※本稿は、竹下隆一郎『内向的な人のためのスタンフォード流 ピンポイント人脈術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

本も資料もない“言葉”で進める授業

教科書やプリントは一切ない特徴的な授業でした。まず担当の講師が60人ぐらいの生徒を10のグループに分けます。グループ内で話し合わせる時間も作らず、いきなり、あるひとつのグループを前に立たせて、「即興」の寸劇をやらせるのです。

グループの6人のうち1人が「オピニオンリーダー」役に任命されます。この人だけは発言内容にルールが課せられます。残り5人で、パーティの準備を進めるというのが内容です。みんなが見ている前で、「3パターンの劇をやるように」という指示が飛びます。

最初のパターンは、オピニオンリーダーが何を聞かれても「NO(嫌だ)」と言う、というルールが決められます。

「今度の週末に、パーティをやりましょう」と講師が呼びかけるところから劇が始まります。

いきなりのことで最初は戸惑うオピニオンリーダー以外の5人。彼らはじっと考えていたのですが、やがて恐る恐る、誰かが声をあげます。

「パーティの料理はすしにしよう!」。

まずはひたすら否定する

ちょっと照れくさそうにその人は言いました。すかさずオピニオンリーダーは、講師の指示通り「NO(嫌だ)」と言うのですが、途端に教室は笑いに包まれました。

「わかった、だったらすしはやめにして、ピザパーティをやろう」。オピニオンリーダーの拒否反応に負けないように、5人は「すし」ではなく「ピザ」をパーティの食事として提案することで代替案を探り始めました。

「嫌だ」と再びオピニオンリーダー。またしても講師の指示通り、拒否をしてしまいます。教室に一気に落胆の声が漏れました。

「そうか、だったら、ハンバーガーはどう? うちにバーベキューセットがあるから、それを持ってきて焼こう」
「嫌だ」
「うーん、ハンバーガーも嫌いか。だったらホットドッグにしよう」
「嫌だ」

どれだけ提案しても拒否をするオピニオンリーダーの態度に対して、だんだんと5人はイラついてきました。

「タコスが良い」とか「フルーツが良い」とか、「お酒がないからオピニオンリーダーは嫌がっているのではないか。だったら僕がビールを持ってくるよ」など色んな意見が矢継ぎ早に出てくるのですが、いつまでたってもオピニオンリーダーの意見が覆ることはなかったのです。

最後はみんなの怒りもピークに達して、「だったら、食べ物はいらないから、みんなでとにかく集まってお喋りしよう!」と叫びます。

これには「NO」と言わないといけないリーダーも思わず笑ってしまいました。