※本稿は、竹下隆一郎『内向的な人のためのスタンフォード流 ピンポイント人脈術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
本も資料もない“言葉”で進める授業
教科書やプリントは一切ない特徴的な授業でした。まず担当の講師が60人ぐらいの生徒を10のグループに分けます。グループ内で話し合わせる時間も作らず、いきなり、あるひとつのグループを前に立たせて、「即興」の寸劇をやらせるのです。
グループの6人のうち1人が「オピニオンリーダー」役に任命されます。この人だけは発言内容にルールが課せられます。残り5人で、パーティの準備を進めるというのが内容です。みんなが見ている前で、「3パターンの劇をやるように」という指示が飛びます。
最初のパターンは、オピニオンリーダーが何を聞かれても「NO(嫌だ)」と言う、というルールが決められます。
「今度の週末に、パーティをやりましょう」と講師が呼びかけるところから劇が始まります。
いきなりのことで最初は戸惑うオピニオンリーダー以外の5人。彼らはじっと考えていたのですが、やがて恐る恐る、誰かが声をあげます。
「パーティの料理はすしにしよう!」。
まずはひたすら否定する
ちょっと照れくさそうにその人は言いました。すかさずオピニオンリーダーは、講師の指示通り「NO(嫌だ)」と言うのですが、途端に教室は笑いに包まれました。
「わかった、だったらすしはやめにして、ピザパーティをやろう」。オピニオンリーダーの拒否反応に負けないように、5人は「すし」ではなく「ピザ」をパーティの食事として提案することで代替案を探り始めました。
「嫌だ」と再びオピニオンリーダー。またしても講師の指示通り、拒否をしてしまいます。教室に一気に落胆の声が漏れました。
「そうか、だったら、ハンバーガーはどう? うちにバーベキューセットがあるから、それを持ってきて焼こう」
「嫌だ」
「うーん、ハンバーガーも嫌いか。だったらホットドッグにしよう」
「嫌だ」
どれだけ提案しても拒否をするオピニオンリーダーの態度に対して、だんだんと5人はイラついてきました。
「タコスが良い」とか「フルーツが良い」とか、「お酒がないからオピニオンリーダーは嫌がっているのではないか。だったら僕がビールを持ってくるよ」など色んな意見が矢継ぎ早に出てくるのですが、いつまでたってもオピニオンリーダーの意見が覆ることはなかったのです。
最後はみんなの怒りもピークに達して、「だったら、食べ物はいらないから、みんなでとにかく集まってお喋りしよう!」と叫びます。
これには「NO」と言わないといけないリーダーも思わず笑ってしまいました。