「いいね」で話の輪がどんどん広がる
休む間もなく、講師が「2つ目のパターン」の演劇に入ることを宣言しました。
今回のパターンにおいて、オピニオンリーダーは、どんな意見に対しても、「YES(いいね!)」と言わないといけないルールになりました。
これだとやりやすそう、という空気が広がります。
お決まりの「さあ、週末にすしパーティをやろう!」という言葉に対して、すかさず「いいね!」とリーダーが口を開きました。
先ほどとは打って変わった姿勢に、みんなも盛り上がり、「いいね、やろう、やろう」と大声を出し始めます。
「すしは、スーパーでも売っているけど、日本人の友達が、家では手巻きずしパーティをやるって言ってた。自分たちで作るのはどう?」
「いいね!」とリーダーが返しました。
「私の友達に日本から来たばかりの子がいて、その人の家にはすし桶があった。それで酢飯を作るんだって。その子も呼んでいい?」
「いいね!」
「あ、だったら俺は材料を買いに行くよ。魚や海苔。日本食スーパーが家の近くにある。生の魚介類が苦手な人のためにアボカドも買っておこう」
「いいね!」
「楽しくなってきた。せっかくだから、すしを食べながら自分達の研究テーマをシェアをする会合にしない? ちょっとした勉強会にもなるよね」
「いいね!」
劇はどんどん面白くなり、講師の人が途中で止めないといけないほどでした。
「いいね、でもね」を繰り返してみると
「YES」の劇が終わったあとは、いよいよ最後のパターンの演劇を行うことになりました。それは「YES、BUT(いいね、でもね)」とリーダーが必ず言うパターンでした。先ほどの「いいね」の劇でテンションが上がったのか、みんなに勢いがあったことを今でも覚えています。
「さあ、週末にすしパーティをやろう!」
同じ呼びかけから劇が始まりました。
先ほどと違うのは、オピニオンリーダーが「いいね、でもね……」と言うことです。
「でも、何?」とみんなが語りかけました。
オピニオンリーダーはもじもじしながら、「いや、でもね、すしは、僕は好きなんだけど、苦手な人もいると思うんだ」とつぶやきました。
メンバーも負けてはいません。1回目の劇で「NO」と言われ続け、免疫ができていたからなのか、粘りが違うように私は感じました。
「わかった、だったら、苦手な人向けにアボカドを加えよう」
「いいね、でもね……」とリーダー。
「今度は何?」
「アボカドが嫌いな人もいると思うんだ。そういう人たちに対してはどうする?」。リーダーの態度が煮え切りません。
「あなたはすしが嫌いなの?」
「いや、『いいね』って言った通り、僕はすしは賛成なんだけど。あくまで、色んな意見を尊重したいので……」