日曜劇場「御上先生」(TBS系)で松坂桃李さん扮する教師の発言や行動のアイデアを出しているのが、“東大逆転合格”で知られる西岡壱誠さん(東大経済学部4年)。西岡さんは「御上先生は文科省から派遣された官僚教師だから、できることがある。このドラマはむしろ受験に失敗した人に見てほしい」という――。

官僚教師は「学習指導要領」の理解度が違う!?

このドラマで僕は教育監修という立場で、主人公の御上先生(松坂桃李)が、生徒に出す問題や教え方、一部のセリフなどを脚本家・詩森ろばさんのオーダーに沿ってつくっています。

例えば、第1話で、御上先生が黒板に数式を書いて授業するというシーンがありました。その問題も、「どんな問題なら御上先生らしく、かつすごみが出るか」ということを、詩森さんとディスカッションを重ねて、つくり上げていきました。

僕が意識しているのは、御上先生が文部科学省から出向した官僚教師ということ。東大卒の官僚というだけでなく、文科省が作成した「学習指導要領」をしっかり読み込んでいるという設定になっています。

脚本監修にあたり、実際に文科省から教育現場に出向されている官僚の方に、取材させていただきましたが、やはり学習指導要領に対する理解度が非常に深い。

そもそも、学校の先生が全員、学習指導要領を読み込んでいるかというと、もちろん読んでいらっしゃる先生もいらっしゃるでしょうが、実際そこまで手が回っていない先生が多いというのも実情です。教科書が学習指導要領に則っているから、わざわざ学習指導要領自体を読まずとも、それらしく指導することは可能です。ただ、やはり学習指導要領というのは受験とは別軸の理念が示されているものなので、学習指導要領を読み込んだ官僚教師の方が、一定の視座の高さや視野の広さがあるのではないかと考えています。

とはいえ現実の学校は、進学実績がメインです。学校によっては、私立大学よりも国公立大学にどれだけ入れたかが評価される。なぜなら親御さんたちが、それを望んでいるから。だから学校の先生は、親御さんの意図や目の前の一人ひとりの生徒というミクロな視点に縛られますが、官僚教師にはそれはありません。御上先生もまた、そういった高い視座を持っているといえます。

だから生徒と話しても、その子がどうだという個別の話ではなく、今、この日本にいる「高校生N=1(エヌワン)」が何を考えているのか、という視座で物事を見ている。セリフを提案するときは、そういう背景を考え、言い回しを「もっと強くしたほうがいいですよ」なんて、こちらから言うこともありますね。