離れて暮らす老親になにをしてあげればいいのか。そのひとつとして「親につくりおきの料理を届ける」が小さなブームになりつつある。火付け役は『親つく』の筆者である料理研究家の林幸子さん。林さんは「冷凍より日持ちのしない冷蔵で送ったほうがいい」とアドバイスする。その理由とは――。

離れて住む老親の食生活が心配な子供に大ヒット中の本

内閣府の「高齢社会白書」(2018年版)によると、高齢者のいる世帯のうち6割近くは1人暮らしもしくは夫婦2人で暮らしている。こうした高齢者だけで暮らす世帯の割合は、今後さらに増えていくと推計されている。

“グー先生”の愛称で親しまれる著者の林幸子さん。料理研究家として30年以上のキャリアを持つ

50代以上になると、自分の老後だけでなく、両親の老後が心配になってくる。親と離れて暮らすケースはなおさらのことだ。

筆者(50代)も84歳の父と78歳の母は夫婦のみの2人暮らし。掃除、洗濯、食事など、老親の日常には心配事が山積みである。特に気をもむのが「ちゃんと食べているだろうか」という点だ。

「高齢者の暮らしで一番気をつけてあげたいのは、やはり食生活です。年をとると台所に立つのがおっくうになって同じものばかり食べたり、コンビニ弁当やスーパーのお総菜で済ませたり。食欲は『おいしい』『楽しい』があってこそわくもので、味気ない食事が続いては食べる意欲さえ失いかねません」

こう指摘するのは、料理教室「アトリエ・グー」を主宰する料理研究家の林幸子さんだ。毎日の食事は健康の源だ。一緒に食卓を囲むのが理想だが、離れて暮らしていればそうもいかない。老親に元気でいてもらうにはどうしたらいいのだろう。

高齢化が進む中、「親つく本」が話題を集める理由

林幸子『介護じゃないけどやっぱり心配だから 親に作って届けたい、つくりおき』(大和書房)
 

その答えのひとつとして、林さんはこの秋、『介護じゃないけどやっぱり心配だから 親に作って届けたい、つくりおき』(大和書房)を出版した。本の愛称は「親つく」。コンセプトは「つくりおきの料理を離れて暮らす老親に届ける」で、すでに新聞やテレビ番組で取り上げられるなど話題を集めている。

林さんは執筆の経緯について「自身の経験がベースになっている」と話す。

「実家の母は関西でひとり暮らしをしていて、ちょっとした煮炊きはするけれど、手の込んだものはつくらない。だから、時間にゆとりができたときに母がつくらないようなおかずを送っているんです。近県の施設で生活する夫の母には、間食用のつまめる料理やお手製のスイーツを持っていきます。そんな“つくって届ける”が20年以上になった今、『教えてほしい』という声が続々と上がってびっくり。親の食生活が気になりながらも、どうしたらいいのか困っている人が多いことを痛感しました」