――会社の同僚とか、取引先と世間話をして親しくなるには、どうすればいいでしょうか。

誰かと親しくなろうと思ったら、仕事以外にもいろいろな話をして、「あの人と会ったら面白い、楽しい」と思ってもらうのが一番でしょう。でもただ笑わせればいいわけではありません。

――たしかに「自分のトークが空回りしているな」と感じることはありますね。

西周の時代に、ウソの狼煙を上げて兵士を慌てふためかせ、ガールフレンドを笑わせようとした幽王(ゆうおう)という王様がいました。結局滅びましたが。無理に笑いに持っていこうとするのはよくありません。

――話題に困るから無理な会話になるんですよね。ついつい仕事の話になってしまいがちで。

僕は初対面の人と話すときは、自分のことを話すのはやめて、なるべく相手の好きなことを聞き出すように心掛けています。「初めてお目にかかります。ところでご趣味はなんですか」など。相手が「音楽です」と言ったら、「クラシックですか、ジャズですか」と。

3つ、4つ聞いていくうちに共通の話題が見つかります。まず相手と共通のテクストを探すのです。誰かと親しくなろうと思ったら、自分でいろいろなネタを仕込んでおくこと、つまり勉強です。

――それは博学な出口さんだからこそという気もいたしますが……。

共通テクストは出身地の話でもいい。

先日、入社前の新人と面談した際に、「入社までの1カ月、何をするの?」と聞いたら、「都道府県を全部回りたいので青春18きっぷを買って行ってきます」と言っていました。全都道府県を回れば、初対面の人でも、「出身はどちらですか?」と聞けば、「あ、行ったことあります」と話ができます。そしてそれが旅の魅力の1つでもあるのではないでしょうか。僕も全都道府県を踏破しています。

――なるほど。

いろいろなことに興味を持ち、相手との共通テクストを増やしておくことが何よりも大事です。広ければ広いほど、話が合う可能性が高くなる。相手が「AKB48」が好きなら、それを話題にして構わないわけです。

――出口さんもAKBを話題にするんですか?

先日、AKBファンの大学の先生と話をしました。どんなものかぐらいは一応知っていますよ。

――ほかにはどんな共通の話題がありますか?

「人・本・旅」が大事だと思っています。つまり、人の話を聞いたり、本を読んだり、いろんなところへ足を運んで、引き出しを増やしておくと共通テクストが自然と広がります。

Answer:「人・本・旅」で、ネタをたっぷり仕込んでください

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
【関連記事】
初対面で好感度アップ! 次につながる「会話術」
なぜ「気の合わない人」との雑談が大切か
グルメ、名所、気質……県民が語る「心を突き刺すネタ」
あなたの「コミュニケーション能力」1分間診断
「休み時間・酒の席」での雑談。地雷ゾーンの見極め方