――「マイナス金利」とは一体何なのか、今一つピンとこないのですが。一体、どういうことですか。

広義では、こう考えればいいと思います。

お金は貴重なので、借りたい人がたくさんいます。ですから借りる人が貸す人に金利を払う。つまり、「金利」は、お金に希少価値があり、借りたい人がたくさんいることを前提にした話なのです。

――マイナス金利ということは、お金が「借りてまでは手に入れたくないもの」になったってことですか。

その通りです。それは、前提条件の2つが消えてしまったからです。

金融緩和でお金を大量に供給したでしょう。日本では法人部門全体で見ても1997年頃から貯蓄超過になっているわけですから、お金はもはや希少ではないのです。

また、お金は運用・保管するのにコストがかかるので、金利が低下して利ざやがなくなれば手数料をもらわざるをえなくなります。

――歴史的には、マイナス金利になったことなんて、ないですよね。

ここ数年のヨーロッパの一部を除けば、ありません。でも、借りたい人がいなければ、金利がマイナスになるのはありうることです。

――現在のマイナス金利は日銀の政策で決まったんですよね。

はい。日銀は“銀行の銀行”です。一般の銀行は、余ったお金をすべて金庫で保管しておくのはコストがかかるので、日銀に預金をしているのです。その預金にも金利がついていたのですが、今度は日銀が「預かり手数料を取ります」ということになった。そうなると銀行は「日銀に預けて手数料を取られるくらいなら、貸して金利をもらったほうがいい」と考えた結果として、企業の活動が刺激されて景気がよくなるだろう。それが政府と日銀の狙いです。

――マイナス金利時代の資産運用は、どう考えればいいんでしょう。

資産運用については「72の法則」を覚えておくといいです。預けたお金の元本が2倍になるのに、72÷金利(%)の年数がかかるという法則です。

僕が働き始めたころは金利は8%だったので、72÷8=9(年)。100万円が9年で200万円になりましたが、今0.1%でしょう。元本が倍になるのに720年かかります。

そうなると、資産運用は金利商品ではなく、投資信託など変動商品を選択肢に入れることになると思います。

――保険はどうですか。

貯蓄型の保険は、預金と同様、マイナス金利でメリットが減ります。保険は掛け捨て型で保障だけを買うという本来の考え方に戻して、貯める機能は別に考えるのがよいでしょう。

Answer:お金の希少価値がなくなってしまったということです

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
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(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)