子どもに伝わるように叱り、褒めるにはどうしたらいいか。小児精神科医の友田明美さんは「叱る必要があるときは『すぐに、短く』叱るのがもっとも効果がある。褒めるときは『ただ褒める』以外に、第三者との会話の中で子どもを褒め、間接的に子どもに聞かせる方法を実践してみてほしい」という――。(第3回)
※本稿は、友田明美『最新脳研究でわかった 子どもの脳を傷つける親がやっていること』(SB新書)の一部を再編集したものです。
マルトリは病気のリスクを高める
子ども時代にマルトリなどの逆境体験があると、さまざまな病気、こころの疾患を抱える可能性が高いことがわかっています。1990年代、アメリカのカイザー・パーマネンテという健康保険会社と疾病予防管理センターが共同で、子ども時代の逆境体験がその後の人生にどのような影響を及ぼすかを検証する調査を行いました。
健康保険加入者1万7000人以上を対象とした大規模な調査で、これをACE研究と呼びます。ACEはAdverse Childhood Experiences(幼少期逆境体験)の略で、18歳までの子ども時代に経験するトラウマとなるような出来事を指します。18歳になるまでに、図表1にある10項目に該当する体験が「ある」と答えた数の合計がACEのスコアとなります。
スコアが4以上の人は、こうした逆境体験がない人(スコア0)に比べて「自殺企図」が12.2倍、「アルコール依存」が7.4倍、「抑うつ」が4.6倍起こりやすいことがわかっています。こころの疾患に悩まされることから違法薬物に手を出しやすく、スコア4以上の人は4.7倍、スコア5以上になると9倍という結果でした。
寿命が20年短くなるケースも
また、スコア4以上の人はスコア0の人と比べて「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」3.9倍、「虚血性心疾患」2.5倍、「脳卒中」2.4倍、「肺炎/黄疸」2.4倍、「ガン」1.9倍、「糖尿病」1.6倍と、病気のリスクが高いこともわかりました。
これらは死因トップ10の中に入る病気です。そして、なんと寿命は約20年も短くなるという結果が出ています。