ペアレントトレーニングで脳を癒やす

マルトリを受けた子どものケアが必要なのは当然ですが、親の育児ストレスを取り除き、傷ついた脳を癒やすことも非常に重要なことです。親の脳を癒やすために「ペアレントトレーニング」というものがあります。これは専門の支援員と直接やりとりをし、ロールプレイなどを交えながら進めていくものですが、ここでは家庭の中にすぐに取り入れることのできるエッセンスをいくつか紹介しましょう。

子どもの問題行動に対して、親が怒りを爆発させてしまうと状況は悪化します。怒鳴る、大きな音を立てる、脅すなど、怒りの表現は一時的には子どもの問題行動を止めるかもしれません。しかし、子どもは「怒りを感じたときは、怒鳴ったり、大きな音を立てたりすればよい」と学んでしまいます。怒りの感情が湧き上がることを我慢する必要はなく、怒りを感じたときに「落ち着きを保つ」ようにすればいいのです。

叱るのは「直後」で「60秒以内」に

そのためにはまず、怒りを感じる子どもの言葉や行動をピックアップします。「学校に行く支度をせず、家を出る時間になってものんびりとしている」「終了時刻が過ぎてもゲームをやめず、『やめなさい』と言っても口答えする」など、怒ってしまうシーンを思い出し、その言葉や行動が出たときに自分の中でどのような変化が起きるかを知っておきます。

「早口になる」「鼓動が早くなる」「ため息が出る」といったようなことです。これらが怒りを爆発させる前のサインになります。そして、自分が落ち着きを保つための方法をいくつか考えておきます。「深呼吸をして10数える」「席を立って子どもから離れる」「紙にイライラの理由を書き出す」などです。このように対処法を考えておき、怒りのサインを感じたときに実行します。

子どもが良くないことをして、叱る必要があるときは「すぐに、短く」叱るのがもっとも効果があります。時間が経っていると子どもは何について叱られているのかわからないため、行動の直後に伝えたほうがいいのです。かつ、60秒以内に終わらせます。くどくどと長い時間お説教をしても効果がなく、「お母さん(お父さん)が怖い顔をしているのがイヤだ、キツイ口調なのがイヤだ」という印象のほうが強く残ってしまいます。

褒められ、認められた経験を積み重ねて、前向きな気持ちや自己肯定感を育んでいきます。子どもを褒めることはとても大事なのです。

多くの親は問題行動を正すほうに意識が向きがちですが、その4倍は褒めるようにしたいところ。望ましい行動をしたときに褒めるのはもちろん、子どものいいところを見つけては積極的に褒めるようにします。

子どもに直接、「よくできたね!」と褒めるだけでなく、褒め方のバリエーションを持っておきましょう。