「怒りはよくない感情だから、できるだけ出させないほうがいい」
そう考える親御さんは少なくありません。でも私は、怒らないことが正解だとは思っていません。むしろ、怒りを表現することはとても大切です。理不尽な目に遭ったり、不当な扱いをされたりしたときに、正しく怒れなければ、つらい状況を変えることができません。
大人は、怒りを抑えられる子を「いい子」と思いがちですが、そういう子は、穏やかに見えても、内側にため込んでいる場合があります。怒りが爆発したときには、手がつけられなくなることも。あるいは、自分を傷つける方向に向かうこともありますので、要注意です。
怒りをゼロにするのがいいのではなく、怒りの感情を出すべきときにどう表現するか、「怒りをどう使うか」を教える視点が必要です。
怒りの感情は「包丁」のようなもの。調理には欠かせない道具ですが、使い方を知らない人が持つと大けがをしますし、人をあやめる道具にもなります。いつ使うか、どう使うかを教えてください。
「怒り方」を学ぶ場所として、家の中は絶好の環境です。きょうだいげんか、大いによし。夫婦げんかも子どもに見せてみましょう。親も人間ですから、けんかもします。価値観が違う2人が一緒に暮らせば、意見が割れるのは自然なこと。むしろ、感情を出す親は失格だ、と考える親のほうが危険です。自分を殺している大人の姿を見て、子どもは何を学ぶでしょうか。感情を持つこと自体が悪い、と受け取るかもしれません。それよりも、感情が動いた後、どう整えるかを見せるほうが役に立ちます。
夫婦げんかをした後、仲直りのプロセスを必ず見せてください。どう折り合いをつけたのか、どこを認めたのか、どう妥協したのか。その場面を子どもに見せることで、「衝突しても関係は修復できる」と伝えられます。
夫婦で対立しても二つの価値観があることは、子どもにとってプラスになります。父と母が違う意見を持っている。それでも一緒にいる。互いにないものを認め合っている。これは大事なモデルです。
ネガティブな感情は「持ってはいけない」ものではなく、成長には大事なものだということをまず伝えて、うまく付き合っていく姿勢を見せてほしいと思います。
※本稿は、『プレジデントFamily2026春号』の一部を再編集したものです。


