――仕事力アップのために勉強したいと思っているのですが、すぐに挫折してしまいます。勉強を続ける良い方法はありませんか。

モチベーションが続かない理由はシンプルで、好きでないか、“腹落ち”していないかどちらかのケースが多いのではないでしょうか。

学生時代、クラブ活動でレギュラー選手に選ばれた人はどんな人だったか思い出してください。頑張って練習していた人でしょう。そういう人は上から言われて練習することもあるでしょうが、基本的には好きだから練習を続けられるのであって、「好きこそものの上手なれ」ということですよね。

――もちろん、勉強はあまり好きではないですね。

仮に好きでないことでも将来のために続ける必要があるという場合は、“腹落ち”しなければなりません。人間は本能的に怠け者の動物ですから。

――“腹落ち”とはどういうことですか?

例えば、何かの資格を取ろうと勉強している人は、その知識を仕事で生かしたり、独立して自由に働く、という夢を持っています。そういった将来の理想の自分像が具体的に頭の中に描けていて、頑張ればそうなれると信じている。実現可能な夢があるから、辛くても耐えられるのです。

――夢ですか……学生のときはありましたが、今は仕事に追われて、なかなか考える余裕がないですね。

具体的な夢がなかったら、「仮置き」でもいい。人間は怠け者ですから、何か目的を設けないと動けない。ですから例えば、ファイナンシャルプランナーの資格を取ろう、英検1級を取ってみようなど、仮の目標をつくって、何歳までにそれを実現するかも決めて頑張ってみましょう。そうしているうちに、あなたが本当にやりたいことが見えてくるかもしれません。僕は、かつてはサラリーマンとして働いていましたが、今は出資してくださった株主のお蔭で創業したライフネット生命をもっと強くて良い生命保険会社にするのが目標になりました。準備していれば、本当の夢を実現するチャンスが巡ってくると考えています。

――なんだか大きな話ですね。僕にはあまり関係ないような気が……。

そんなことはありません。目標に向けて頑張るのは、人生を楽しむために必要なことです。楽しくない、面白くないと考えながら生きていたら、寿命が縮んでしまいます。脳は体の健康をつかさどっていますから。目標に向けて頑張って、仕事を楽しく、面白くするほうが心身ともに健康で長生きするということは、様々なデータでも実証されています。

これからの人生では、今のあなたが一番若いのです。どうか頑張ってください。

Answer:まずは目標を「仮置き」して頑張りましょう

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
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