仕事以外での歓談は一体感を生み、いい仕事にも繋がる。とりわけ酒の席では無礼講だが、いきすぎた言動は命取りになる。その境界線とは。

日本航空社長の植木義晴氏が欧州便に搭乗していたころ、米アラスカ州のアンカレッジは、給油などで寄港する中継地点だった。10時間ほどの待機に備えて、個室のほかにクルールームがあり、一種のサロンのようになっていた。みんなが日本から持ち寄った簡単なオードブルをテーブルに並べて、即席の宴会がはじまることも少なくなかった。

「海外でのステイの際も、自分の部屋で睡眠をとってもいいのですが、時差の関係で夜中に目が覚めてしまうこともあり、よく機長の部屋に集まりました。ベテラン機長は、たいがい雑談のプロでした。いまでも彼らが話してくれた経験談が役立っています。いわば耳学問ですが、そういう場で教えてもらったことは一生忘れません」

異国の地で、同じ飛行機を運航するチーム仲間と共有する時間が、思わぬ効用をもたらす。歓談を通しての相互理解と一体感の醸成が、帰りのフライトのクオリティを格段に向上させるのである。当然、乗客の満足度も日本航空への評価も上がる。

ここまで言えば大ウケするが……

基本的には無礼講だが、座の雰囲気を壊す発言はNGだ。とりわけ、他人の身体的特徴を揶揄したり、パワハラ、セクハラに類する言動がもってのほかなのはいうまでもない。

とはいえ、ギリギリの線までいくのも雑談の妙味である。

植木社長は「どこまで踏み込んでいいかは、集まっている人によって違うでしょう。そこはちゃんと感じ取って『ここまで言えば大ウケするが、今回は手前で止めておこうか……』という配慮は必要でしょうね」と話す。

無礼講とはいえ、酒の席での失敗は、ビジネスマンの命取りになりかねない。上司と部下、先輩と後輩という位置関係はどんなときも心の隅に置いておく必要があるということだ。話す内容だけではなく、言葉遣いも、それ相応の配慮はしなければならない。