人間の脳の使われ方の中で、最も高度なものの一つは、コミュニケーションである。知識やスキルは、人工知能やロボットに置き換えられてしまう時代。関係性や、絆こそが、ビジネスで最も大切な「人的資源」となる。

進化生物学者のR・ダンバーは『ことばの起源』で、猿の毛づくろいが人間の言語にあたると説いている。(写真=AFLO)

「毛づくろい」は、猿の群れにおいて、仲間同士の絆を深める。お互いに毛づくろいをする猿同士は、トラブルの際に助け合う傾向があることが観察されている。

毛づくろいをする仲間の数は、脳の容量に比例して増える。人間の脳の大きさから推定される「毛づくろい仲間」の数は、約150人。この数を目安に、毛づくろいの相手を増やし、維持することが大切である。

人間における毛づくろいとは、つまりは会話。とりわけ、特定の話題や、仕事上の目的に縛られない「雑談」こそが、毛づくろいの最も効果的な方法となる。

これからの時代に、ビジネスの世界で一番大切なポイントは、実は毛づくろいなのではないか。会社の中でも、それ以外でも、広く、深く、そして多様な「毛づくろいのネットワーク」を維持することが大切である。

毛づくろいは、何よりも、絆を深める。毛づくろいが維持できている人同士は、助け合おうとする。いざというときに、力になってくれる人のネットワークができる。

毛づくろいを通して、さまざまな情報が入ってくる。それぞれの専門分野は異なるから、お互いの得意な部分の「かけ算」ができる。毛づくろいが、「共創」の大切なきっかけとなる。