日本食ブームに合わせて、海外でも日本酒人気が広がっている。しかし、蔵元が「一番おいしい」という生酒を輸出することは難しいとされていた。この問題を解決したのが、日本酒を急速に凍らせるという独自技術だった。酒ジャーナリストの葉石かおりさんが取材した――。
時間とともにフレッシュさは失われていく
蔵元をはじめ、日本酒に携わる人には長年変わらぬ願いがある。それは「搾りたてのみずみずしい味を、そのまま飲んでほしい」ということだ。
しかし現実は厳しい。大きな壁となって立ちはだかるのが、輸送と温度管理だ。特に搾り立ての生酒を筆頭にフレッシュさが命の付加価値商品は、時間の経過とともに香りや味わいが変化しやすい。既存の冷蔵輸送では、どうしても限界があった。
結果として、本来もっと評価されるはずの日本酒が、国内外の市場に十分届き切れていないという課題が生じていた。
この課題に真正面から向き合い、突破口を開いたのが、株式会社TOMIN SAKE COMPANYが展開する急速冷凍技術「凍眠」である。
できたての日本酒を「凍眠」させればいい
「凍眠」は、一般的な冷気による冷凍ではなく、マイナス30℃に冷却したエチルアルコールを用いて一気に凍結させる特殊技術を使う。そのスピードは、一般的な冷凍庫で凍らせた場合の約20倍。開発元である株式会社テクニカンが国内外で特許を取得している。
「凍眠」と日本酒が出会ったことで生まれた「凍眠酒」は、今、日本酒の可能性をさらに大きく広げつつある。その中心にいるのが、TOMIN SAKE COMPANYで代表取締役を務める前川達郎さんだ。出会うべくして出会ったとも言える凍眠技術と日本酒。その秘話に迫る。


