毛づくろいは、ビジネス上の一つの「安全保障」「セーフティ・ネット」にもなる。会社の中でも、毛づくろいがよくできている人は、リストラされにくいだろう。

知識やスキルは、置き換えることができる。一方、人間関係は、簡単には入れ替えられない。「あいつがいると、チームが何となく円滑に動き、盛り上がるんだよな」というような存在は、会社に一番欠かせない人材であると言える。

毛づくろいは、なれ合ったり、ご機嫌を取ることだけとは限らない。むしろ、自分と意見が異なる人と、いかに会話を交わし、意思を通じるかということも、毛づくろいの大切なポイントとなる。

組織や社会の中でイノベーションを起こしたり、変革を実現するような場合には、往々にして「反対派」との毛づくろいが大切なポイントになる場合がある。立場が違うからといって、コミュニケーション自体を断ってしまうのは愚かである。反対の立場の人との対話を続けることが、プロジェクトの成功に欠かせないことも多い。

「絆」というと、意見が合ったり、仲の良い人とのつながりをイメージする場合が多いかもしれない。確かに、気の合う人同士の絆も大切であるが、毛づくろいは、反対派ともやったほうがよい。

あることに「賛成」の人は、社会の中で一つのグループをつくっている。「反対」の人も、一つのグループである。毛づくろいをすることで、立場の異なる人々を結びつけ、真に創造的な動きを生み出すことができる。

自分の毛づくろいの「ポートフォリオ」の中には、自分の好きな人ばかりではなく、違和感を抱く人も入れておこう。そのような多様性が、安全基地にも、共創のきっかけにもなるのである。

(写真=AFLO)
【関連記事】
初対面での雑談。好印象を与える「共通項」と「事前調査」
なぜあのヒラ社員には情報が集まるか
女に嫌われる話し方、男に嫌われる話し方
なぜ上司と雑談できない若手が増えているのか
あなたの話がつまらない4つの理由