※本稿は、山田尚史『きみに冷笑は似合わない。SNSの荒波を乗り越え、AI時代を生きるコツ』(日経BP)の一部を再編集したものです。
スペシャリストとジェネラリストのどちらを目指すか
人事評価や採用面談だったり、あるいはメンターとしてキャリア相談に乗ったりするときに、特にエンジニアに関して悩みが多いのは、スペシャリストとジェネラリスト、どちらを目指すべきかということである。それは言い換えると、技術を極めて突き抜けるべきか、マネージャー職にキャリアを軌道修正すべきか、という葛藤のことが多い。
あまりエンジニアの生態に詳しくない人も多いだろうから簡単に説明すると、エンジニアの多くは自分の技術に自信を持っており、自分より技術がわからない人に自分の技術力を評価されることをひどく嫌がる。多少誇張した表現だし、例外的な人ももちろんいるのだが、この方針でいくと、人事評価の役割を持てるのは一番優秀なエンジニアだけ、ということになってしまう。
しかし一方で、ずっとエンジニアのキャリアを積み上げてきた人にとって、マネージャーになるというのは転職に近い。例えるなら、突然経理部や法務部に配置転換されるのと同じように感じるのである。また、マネジメントというのもやはり技能が必要で、向き不向きがあり、特にコミュニケーションスタイルの点で、エンジニアとして日々こなしてきた仕事と相性が悪い場合もある。
エンジニアがスペシャリストを目指すのも茨の道
適性を見るために試しにやってみようという考え方もあるが、マネージャーになるというのは役割上出世のように見えてしまうので、やってみてダメでした、とメンバーに戻すのも収まりが悪かったりする。それに、新しい役割やそれに必要な技能を身に付けるにあたって、その人自身がそのキャリアを能動的に選択したのでなければ、多くの場合失敗につながってしまうだろう。
結果的に、エンジニアの多くは、スペシャリストを目指したい、という人が多いように見受けられる(グーグルの検索窓に「エンジニア マネージャー」と入れてみたところ、サジェストの一番上は「エンジニア マネージャー やりたくない」だった)。ただ、私の個人的意見からすると、スペシャリストを目指すのも、なかなかに茨の道である。
理由はいくつかあるが、まず、昨今の技術のライフサイクルの短さが挙げられる。今使われている技術が、5年後10年後も同じ重要さで引き続き使われている可能性はかなり低い。サーバー技術者を見てみても、15年前は自分でラックを組み立てられる人の需要はいくらでもあったが、今はクラウドが一般化していて、仮想サーバー、あるいはコンテナの設定ができる人の方が需要がある。もちろん基盤側には引き続きスペシャリストが必要であるし、培ってきた技術が無駄になるわけではないのだが、その椅子の数が大幅に減っているのは否定しようがない。

