同じ会社の同じ階層にいても、まだ発表されていない人事情報やプロジェクトの概要など、重要な社内情報の集まる人とそうでない人がいます。両者の違いの背景には社内人脈があり、そのベースになるのは相手との信頼関係です。

私たちはよく「信頼残高」という言葉を使っています。信頼には残高があり、画期的な仕事や期待を上回る行動をすると残高が増え、遅刻などつまらないことでも期待を裏切れば減少します。信頼残高が低いのに、重要な情報を教えてもらえることはありません。

頼んでいないのに情報を与えられる場合もあります。「この人に教えたほうが得だ」と相手に思わせることに成功しているからです。「得」というと具体的な見返りを想起するかもしれませんが、ここでは心理的な得も含みます。

情報提供者は、相手から感謝の気持ちを表してもらうと気分がよくなります。一方、情報をもらう側は、感謝の気持ちを表すことによって自分の信頼残高を増やすことができます。

つまり、「打てば響く人」には情報が集まりやすいのです。私も部下に頼まれて情報を教えたとき、お礼を言われると悪い気がしません。簡単なことですが、これができる人は意外に少ない。

逆に情報が集まらない人は信頼残高が低く、しかもその事実に気づいていないという特徴があります。謙虚さがなく、何かしてもらっても感謝するということがない。こういう「暖簾に腕押しの人」には、誰も情報を教えません。

では、どうすれば社内人脈を豊かにできるでしょうか。ポイントは3つあります。

1つ目は、組織貢献の意識を持つこと。社内人脈をつくる目的はあくまで自分が生み出す成果を最大化し、組織に貢献するためです。単なる知り合いが多いだけでは成果につながりません。

ちょっと強面で近づきにくい雰囲気の部長がいたとしましょう。しかし組織への貢献という視点を持っていれば、「部長の力を借りたほうが成果を出せ、会社に貢献できる」と合理的に思考し、近づいていけるようになるわけです。