尖閣諸島周辺で軍事衝突の可能性

今年6月は、我が国周辺の海洋における安全保障情勢に、画期となる出来事が起きた。

6月9日未明に中国が「領有権」を主張する尖閣諸島内の接続水域に初めて海軍フリゲート艦を侵入させたこと、続く15日未明には海軍情報収集艦を鹿児島県口永良部島西方の領海に侵入したことがそれだ。

更に、16日以降、尖閣諸島周辺の領空近くに中国空軍戦闘機が接近し、スクランブルをかけた航空自衛隊機に戦闘機動(空対空ミサイル発射やドッグファイトに入る直前の空中動作)をしかけることが繰り返され、空自機は自己防衛システムを使用して離脱したことが明らかになった(元空将の織田邦男氏が6月28日付でニュースサイトに発表)。

中国国防相は7月4日に「日本の戦闘機がレーダーを照射した」と反論しているが、尖閣諸島周辺は、海、空の両方で軍事衝突の可能性がにわかに現実のものとなったのである。

6月9日未明、中国海軍の「ジャンカイ型」フリゲート艦による尖閣諸島の西部分――久場島、大正島間の接続水域に対する侵入は、きわめて異例な状況下で起きた。ロシア海軍艦艇の同水域通過とほぼ同時並行して、事態が生起したのだ。

その直前の6月8日夜、海上自衛隊は尖閣諸島の北と南で警戒監視のために護衛艦を配置していた。北側は、久場島北方に遊弋(ゆうよく・海上を動き回ること)する中国フリゲート艦に対応する「せとぎり」、南側はあらかじめ尖閣諸島内の接続水域を通過すると予想されていた駆逐艦を含むロシア海軍艦艇3隻に対応する「はたかぜ」である。

ロシア連邦大使館の説明によると「ロシア軍艦は東シナ海方面での定期的演習の往来で通過したもの」とのこと。実際、過去何度もロシア海軍艦艇は同じコースを通過していた。接続水域は、領海に隣接する12カイリの範囲で領海側を実効支配する国が犯罪行為などについて取締権を有する海域のことだ。通常、外国軍艦を含む船舶が通行することは問題ない。