6月下旬、英国が欧州連合(EU)に残留するか離脱するかの国民投票が行われ、約52%が離脱を選択するという結果が出た。直前の予測を大きく裏切る選択で、ポンド安と株価下落に見舞われた。
そもそも、離脱派は何を目指していたのだろうか。経済の悪化と世界的な混乱を目論んでいたわけではもちろんない。国民に大きなアピール力を持つボリス・ジョンソン前ロンドン市長が旗振り役となったのが、離脱派の運動組織「ボート・リーブ」だ。選挙戦中に掲げていた離脱の理由を見てみよう。
真っ先に挙げられたのが「離脱すれば、(EUに支払っている)毎週3億5000万ポンド(現在のレートで約455億円)を節約し、国民保健サービス、学校、住宅に使うことができる」だ。ボート・リーブの選挙用バスにはこのメッセージが大きく描かれた。さらに、「国境を自分たちで管理できる」「難民・移民の流入をコントロールできる」「世界中と自由に貿易ができる」。一言で言えば、英国の「主権を取り戻す」ことを目指したものだ。選挙直前のディベート番組でジョンソン氏は、「投票日を英国の独立の日にしよう」と言って演説を終え、会場を大いに沸かせていた。
離脱について、現在のところは悲観的な見方が圧倒的だ。しかし、英国は官僚機構の肥大化や民主主義の欠落が問われているEUに対して、「離脱」という大胆な決断で今後の再考を迫る最初の国となった。そういった意味では「英国人として誇らしい」という声も聞いた。