注目されている東京都知事選(7月14日告示、31日投開票)は17年ぶりの「保守分裂」選挙に突入する公算が大きくなった。候補者選定が難航していた自民党は、党東京都連が推す増田寛也前岩手県知事の組織力に期待を寄せ、知名度の高い小池百合子元防衛相は無党派層の期待を背に戦いを挑む。それぞれが都知事に就任した場合はどのような都政となるのか。そのメリット、デメリットをいち早く考察する。

改革派の小池氏と安定感の増田氏

スカイツリーから飛び降りる増田氏と崖から飛び降りる小池氏の対決。(時事通信フォト=写真)

増田、小池両氏の構図は激しい「前哨戦」の末に生まれた。先に仕掛けたのは小池氏だ。小池氏は党都連に相談せずに出馬表明したことが問題視された。激高した党都連幹部は即座に「小池包囲網」を築き、「絶対に叩きのめす」と息巻いた。しかし、小池氏を連日糾弾する姿を見せられた世論は小池氏支持になびく。世論調査では小池氏のほうが人気が高く、候補者選考レースは「小池氏対党都連」の構図となった。

小池氏は7月5日に党都連の石原伸晃会長に正式に推薦を要請した。しかし、10日投開票の参院選後に結論を先送りする考えを伝えた石原氏に対し、SNS上で「ジャンヌ・ダルク」とも評された小池氏は反発。あらためて出馬を表明した。環境相就任時の宰相である小泉純一郎元首相は「党が推薦していなくても立候補するのは度胸がある」と小池氏にエールを送った。

防衛相、首相補佐官(国家安全保障担当)、党総務会長など重要ポストを務めた小池氏の売りは「決断力」と「率先力」だ。環境相時代に提唱したクールビズは定着し、第一次安倍晋三内閣で取り組んだ国家安全保障会議(日本版NSC)は第三次安倍内閣で欠かせない司令塔となっている。第一次安倍内閣の閣僚経験者は「小池氏は抵抗が強い政策でも世論の支持を背景に実現に結びつける能力に優れている」と評価する。