自民党の小池百合子元防衛相は、6月29日、国会内で記者会見し、東京都の舛添要一前知事の辞職に伴う東京都知事選(7月31日投開票)への立候補を表明した。小池氏は「都政の信頼回復、停滞の解消、希望あふれる未来の首都・東京の構築のため、崖から飛び降りる覚悟で挑戦したい」と出馬の決意を語った。

ポスト舛添の大本命・小池百合子を阻む壁

政治資金問題で辞任した東京都の舛添要一前都知事の後任を決める都知事選(7月31日投票)まで約1カ月となった。しかし、有力候補と目されていた民進党の蓮舫代表代行や櫻井俊前総務事務次官が相次いで出馬を固辞し、主要政党の候補者選定作業は難航している。選挙準備を考えれば6月中に候補者を決定させる必要があり、民進党や共産党など野党は共闘できる候補者の一本化を急いでいる。だが、小池百合子元防衛相の擁立を軸に調整していたはずの自民党からは「時間をかけて慎重に選ぶべきだ」との声が漏れる。蓮舫氏の出馬固辞で異変が生じた都知事レースには、一体なにが起きているのか。

「国政でしっかりやることがあるので、参院選に立候補する」

6月21日、蓮舫氏が都知事選に出馬しないことを断言すると、自民党幹部は安堵の表情を浮かべた。これまで蓮舫氏は「ポスト舛添」の最有力候補の1人で、民進党幹部は蓮舫氏を都知事選に担ぐことにより、7月10日投票の参院選でも同党への支持が集まるとの計算もあった。

しかし、蓮舫氏周辺は都知事選で自民党が擁立する候補者次第で敗北もありうると冷静に分析。慎重姿勢を見せる野田佳彦前首相の意向も踏まえて最終的に出馬を断念した。候補者選考が振り出しに戻った民進党は、参院選で共闘する野党での候補者の一本化を目指す。片山善博前鳥取県知事や長島昭久元防衛副大臣らの名があがる。前回知事選で宇都宮健児元日本弁護士連合会会長を推した共産党も野党での候補一本化を優先して柔軟に選考する構えを見せる。

蓮舫氏の不出馬表明は自民、公明両党にも大きく影響した。集票力のある蓮舫氏の対抗馬として、自民党は知名度が高い小池氏を擁立することで調整していた。しかし、ここにきて「蓮舫氏以外ならば俺でも勝てる」と淡い期待を抱く関係者が続出。小池氏を擁立させたくない勢力が台頭している。