政財界のあの大物も「三菱」出身者

三菱自動車による一連の燃費データ不正事件は、自他ともに「日本最強の財閥」と認める三菱グループにとって大きな痛手となった。

「三菱グループは商号を大事にする。『三菱』の商号がついた会社は倒産することがないといわれるほど。取引先に対する与信管理も厳しく、石橋を叩いて渡らないこともある。三菱というブランドに傷がつかないよう、細心の注意を払ってきたのです」(業界関係者)

東京・千代田区にある三菱商事本社。(時事通信フォト=写真)

そんな三菱グループのブランド力に傷をつけてしまった問題児、三菱自動車。御三家の三菱重工から独立した自動車メーカーだ。ある財界人が言う。

「三菱自動車は昔から三菱重工に対してコンプレックスがあった。だからこそ、海外を中心に実績を積み、業績を上げたときは『重工、何するものぞ』という時期もあった。たしかにエンジンの技術力には定評があったが、実際に海外でクルマを売ったのは三菱商事だ。しかも、不祥事は今回で3度目。本当は匙を投げたいくらいの怒りがグループにはある。しかし、従業員の雇用や社会的信用を鑑み、日産傘下での再生という苦肉の策を選んだのだろう」

本来なら、率先して三菱自動車を支えるべき存在の三菱重工も冴えない。2016年3月期は大型客船の建造遅延により最終減益となった。ほかにも、日立製作所との火力発電プロジェクトの事業評価額をめぐり、約3800億円の支払いを請求したことに対して日立が反論するなど問題が山積している。

同じく御三家の三菱商事も、16年3月期は資源安により戦後初の赤字に陥り、利益首位の座を伊藤忠商事に明け渡してしまった。実は日本の総合商社は00年以降、海外の投資家から「資源株」と目されてきた。三菱商事だけでなく、三井物産、住友商事も資源分野で収益を上げてきたが、そのリスクが顕在化する形となった。

ある関係者は、「いつかこうなることは誰にでもわかっていた。資源分野に頼りすぎる傾向に懸念を抱き、ここ数年は各商社が手を打とうとしてきたが、できなかったのだ。その中で、カリスマ・岡藤正広社長率いる伊藤忠が非資源分野に注力し、利益トップにのし上がった」と語る。ただし、当の岡藤氏も「不戦勝で1人だけ土俵に上がっているようなもの。値打ちはない」と話すように、財閥系総合商社の実力は侮れない。