特に三菱商事は「ブランド力で仕事ができるため、国内では下位企業よりも努力せずにゴールに行ける。他社と違う次元でビジネスをしている」(経済部記者)といわれるように、その人的ネットワークは政財界でも際立っている。実際、社員には安倍首相の兄である寛信氏(現三菱商事パッケージング社長)をはじめ、政財界の名門一族の出身者がずらりと並ぶ。福田赳夫元首相の孫である達夫氏や後藤田正純自民党衆議院議員も三菱商事の出身者である。

「三菱商事は、人材で1つ抜きん出た存在だ。ゴールドマン・サックスやマッキンゼーと並び、就職先として人気も高い。新浪剛史サントリーホールディングス社長など表舞台で活躍している出身者も多く、ヘッドハンティング攻勢もよくある」(業界関係者)

現在、三菱グループのドンとして君臨するのも、創業家岩崎家の係累にあたる三菱商事元会長の槇原稔氏だ。今は、弥太郎の長男であり3代目総帥の岩崎久弥のコレクションを集めた財団法人「東洋文庫」の理事長を務める。ハーバード大出身で米国エスタブリッシュメントとの交流も深く、日米交流のキーパーソンの1人といわれている。

「三菱商事は米国のジョン・ルース前駐日大使とベンチャーキャピタルファンドを設立するなど、他社にはない政財界中枢につながる人脈の広さがある」と、ある関係者は語る。

「三菱は何といっても人材が豊富でプライドも高い。商事も今後は懸案の非資源分野で必ず何か仕掛けてくるだろう。重工も、国産初のジェット旅客機MRJの開発にめどがつけば、社内の士気も上がり調子を取り戻してくるはず。むしろ警戒すべきだ」という財界関係者の声もある。三菱グループが本当の底力を見せるのはこれからだ。

(時事通信フォト=写真)
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