トヨタの1割以下、貧弱だった開発費
三菱自動車の燃費偽装問題に大きな驚きを隠せない。三菱自動車の2015年度の総生産台数は120万4808台。国内シェアは約2%、世界シェアは約1%と規模は小さい。このため研究開発費はトヨタ自動車の1割以下だった。熾烈な燃費競争が繰り広げられるなかで、消費者の信頼を裏切った三菱自動車は、今後も存続できるのだろうか。
今回の燃費不正は、2つの問題に整理できる。第1の不正は、型式認証で計測する公式燃費(いわゆるカタログ燃費)を偽装する目的で行われた、「走行抵抗」と呼ばれる数値の意図的な改竄である。
販売停止となった「eKワゴン」や日産の「デイズ」など軽自動車4モデルで62.5万台が不正対象だ。三菱自動車はこの4モデルだけとしているが、国土交通省の立ち入り検査や第三者調査結果次第では、対象がさらに拡大する可能性がある。
第2の不正は、「走行抵抗」の計測方法での違反だ。燃費は、空気抵抗、タイヤの転がり係数など、実走行条件下で受ける抵抗で変わる。燃費計測の際には、この抵抗をインプットすることで数値を調整する。計測方法は、欧州で一般的な「惰行法」を用いることが国内で法令化している。ところが、三菱自動車は米国流の「高速惰行法」を用い、2002年以降、国内13モデルのうち、問題の軽自動車を含め、実に10モデルで違反をしていた。その後の社内調査の結果、1991年の道路運送車両法により測定法が「惰行法」と指定された当時から、現在まで「高速惰行法」で国内向け車両の計測が続けられたとされる。
記者会見で三菱自動車は、「正確なデータに基づけば、『高速惰行法』は必ずしも燃費計測を有利にするものではない」と繰り返した。目的はコスト削減のようだが、これほどの長期にわたる法令違反の動機は不明のままだ。三菱自動車には、今後、走行抵抗を計測し直し、燃費の再計算が求められる。この結果に対する国土交通省の判断次第で、問題は著しく拡大する恐れがある(※1)。
自動車の排気ガス、走行燃費に対する規制は年々強化され、認証のプロセスは複雑化している。走行抵抗値の算出にも多大な時間と設備が必要なため、自動車メーカーが実施した走行試験の結果を「自主申告」する形式が採られてきた。今回の不正は認証制度の抜け穴を露呈させ、燃費試験のあり方に大きな疑問を投げかけることになった。