※本稿は、矢野宏行『薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)の一部を再編集したものです。
カロリー制限では血糖値は下がらない
血糖値をコントロールするには食事選びだけでなく、食事方法にもポイントがあります。
糖尿病になると医師から食事制限を勧められる方が多いと思います。
確かに、肥満※になると、血糖値が上がるリスクが高まるのは間違いありません。しかし、私が毎年3000人以上の糖尿病患者さんを診てきた中で、カロリー制限中心の食事指導で血糖値が思うように下がった方は残念ながらほとんど見たことがありません。
※BMIが25以上だと肥満と判定される。BMI=体重(kg)÷(身長〈m〉×身長〈m〉)
実はそれには理由があります。
まず、消費カロリーと摂取カロリーの差が直接体重の減量につながるわけではないということです。
糖尿病患者さんの多くが運動でカロリーを消費したり、食事制限をしたりすれば瘦せるとお考えかもしれませんが、実は消費カロリーには各自の基礎代謝量が大きく関係しています。基礎代謝量は年代、性別などによって個人差があり、食事量によっても変化します。これを上げるには全身の筋肉量を増やす必要があります。そのため、血糖値を下げるサイクルに入るまでに大幅な時間がかかってしまうのです。
ではどうすればいいのか
そこで、血糖値を下げるためにお勧めしたいのが糖質制限です。
糖質制限した糖尿病患者を対象にした研究によると、「糖質制限は血糖降下薬を服用していない2型糖尿病患者の体重を減らし、HbA1cを改善した※」ことが分かっています。つまり、糖質制限をすれば、血糖値が下がるだけでなく、肥満を解消する効果もあるのです。
※Dorans KS, et al. Effects of a Low-Carbohydrate Dietary Intervention on Hemoglobin A1c: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open 2022; 5: e2238645.
糖質制限の対象となる炭水化物は、エネルギー源となる糖質と食物繊維とで構成されています。炭水化物はさまざまな食べ物に含まれていますが、とくに主食となる白米やパンなどに多く含まれています。そのため、主食を中心に炭水化物の摂取を控えれば、血糖値は上がりづらくなります。

