真のパートナーを見つけられるのか

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利益率は急速に回復していたが……

最後に、三菱自動車はどこへ向かうのか。2014年の春、三菱自動車は優先株を完全に処理し、16年ぶりの復配も実現させた。ダイムラークライスラーから投げ出され、ここに来るまで実に10年におよぶ時間を要した。書き尽くせないほどの過酷な改革とリストラを続け、そして現在の三菱自動車は、ユニークな製品群と収益構造を持つ会社へ再生を果たしていた。

もし、不正問題が国内軽自動車だけに限定されるなら、もう一度、再生を遂げる可能性は十分にあるだろう。ユーザーへの燃費補填・賠償、日産への賠償金、エコカー減税の返納、制裁金、訴訟費用などを合わせて直接的な費用は最大1000億円程度と試算する。

しかし、現実はそれほど甘くないかもしれない。必然性は低いと考えるが、軽自動車4モデルの「買い取り」が避けられなくなるケースでは、影響額は数千億円に拡大するだろう。さらに、不正車両がその他車種や海外車両にも波及するのであれば、影響額は著しく増大する。

さらに深刻な問題は、パートナーである日産自動車の信頼を裏切ったことだ。三菱自動車が持続的に存続していくには、相互恩恵のあるパートナーシップの構築が不可避と考える。だが、度重なる不正により信頼を失った今、三菱自動車が有力パートナーと出会えるチャンスはきわめて低くなった。独自の要素技術を磨き、強みを有する市場を築き上げることで、三菱自動車もいつかは理想のパートナーに巡り合い、将来の発展を掴み取ることを期待してきただけに、残念極まりない。

※1:国土交通省は4月26日、自動車局局長などで構成される「自動車の型式指定審査におけるメーカーの不正行為を防止するためのタスクフォース」を設置。「不正行為の全容解明を踏まえつつ、速やかに検討を進める」としている。
※2:三菱自動車の4月26日付のプレスリリースでは「当社製軽自動車における燃費試験データ不正の経緯について」として、「目標燃費は当初(2011年2月)26.4km/lであったが、その後の社内会議で繰り返し上方修正され、最終的(2013月2月)には29.2km/lまで引き上げられた」と書かれている。

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