ハロウィンブームの放火犯「パリピ」とは

私はマーケターとして2002年から若者研究を続けています。そこでの課題は「どうすれば若者に消費させられるか」です。

ひとつの解が2年前に著書『ヤンキー経済』で提唱した「マイルドヤンキー」です。若者の消費意欲は鈍っています。車離れ、酒離れ、旅行離れが顕著です。ところが地方には、強い地元志向をもちつつ、消費意欲の旺盛なマイルドヤンキーが多数いる。この「発見」は、14年の「ユーキャン新語・流行語大賞」に選ばれるなど、大きな話題を集めました。

では、こうしたマイルドヤンキーに商品・サービスの情報を届けるにはどうすればいいのか。いいかえれば、若者の間に「流行」をつくるにはどうすればいいのか。そこで見えてきたのが「パリピ」の存在です。

パリピとは、パーティーピープルの略。大規模なパーティーや音楽イベントなど、賑やかでキラキラした集まりで騒ぐのが大好きな、高校生から20代後半くらいまでの若者です。彼らは新しいこと、面白そうなこと、派手なことに対する感度が非常に高く、友人も非常に多い。そのため自分たちが飛びついた新しいモノやコトを、ほかの若者たちに伝播・拡散できます。彼らはマイルドヤンキーも含む若者のトレンドに強い影響力を持っているのです。

たとえば「ハロウィン」が流行になった発端はパリピにあるといえます。そもそもハロウィンは古代ケルト人の祭りを起源とする宗教的な催しで、19世紀以降のアメリカで大きなイベントになりました。毎年10月31日に子供たちがお菓子を求めて近所の家をたずねまわる様子は、昔から知られていました。

それをパリピは「コスプレ(派手な衣装で着飾ること)をして繁華街に繰り出すイベント」に変えて広めたのです。私の観察調査によると、都内では2007~2008年から、都内でクラブ通いをしているパリピが仮装して街に繰り出すようになりました。その様子がツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどのSNSでひろがり、2010年ころには渋谷や六本木などの繁華街でコスプレ集団が騒ぐ様子がテレビで紹介されるようになりました。

日本記念日協会・記念日文化研究所によると、2015年のハロウィンの市場規模(推計)は約1220億円(※1)。 11年の560億円からわずか4年で倍増しており、14年のバレンタインデー市場(約1080億円)を上回っています。15年は東京や大阪などの大都市だけでなく、全国の地方都市で大規模なハロウィンイベントが行われています。

パリピはハロウィンを「楽しく騒げる場」「友人を集める理由」として輸入し、自分たちなりにアレンジしました。そのため日本のハロウィンには宗教的な意味合いがありません。一部のパリピが面白がってはじめた「コスプレイベント」が、数年を経て、日本全国の幅広い年代が参加する国民的イベントになったのです。これは裏を返せば、パリピの志向と動向を掴むことができれば、日本全国に売れる商品やサービスを創り出せる可能性があるわけです。