「男性は消費しない」は典型的な誤解
いまどきの男性はなよなよしている――。確かに若い男性の「女子化」は流行語の常連です。「新語・流行語大賞」では、2009年には「草食男子」、10年には「イクメン」がトップテンに選ばれ、13年にも「日傘男子」が候補語になりました。
私は博報堂ブランドデザイン若者研究所、通称「若者研」で2002年から、大学生を中心とした若者の消費行動を研究しています。これまでに直接会って話した若者の数は1万人超。その経験でも、この数年、手作りの弁当に凝ったり、部屋に花を飾ったり、化粧ポーチを持ち歩いたりする「女子力の高い男子」が増えている実感があります。私はこうした男性を「女子力男子」と名付け、その消費行動を調べました。81人のリアルな姿は拙著『女子力男子』で詳しく紹介しています。
こうした「なよなよした男性」に対して、オジさん世代は「元気がない」という印象を持つようです。しかし私の印象は正反対です。若年女性は、「男女雇用機会均等法」が施行された1986年前後の変化が最も大きく(※1)、最近では専業主婦志向を強めるなど徐々に保守化しているように感じます。これは女性の労働率は大幅に上がった一方、男女の賃金格差は依然として大きく、非正規雇用率も高いという厳しい現状を反映したものでしょう。
これに対し、若年男性はこの数年、「女子力」を身につけるという方向で急激に変化しています。ここには市場としても大きな魅力があります。典型的な誤解のひとつは「若者の消費離れ」というイメージです。
その契機は、私見では、2007年8月の日経MJの特集記事「巣ごもる20代」です。記事は「車は不要。モノはそれほど欲しくない。お酒もあまり飲まない」という書き出しで始まり、「堅実・小規模な暮らしを好む若者たちの『ミニマムライフ』が浮き彫りになった」としています。
ところが事実は異なります。1980年から2013年の1カ月の消費支出を年代別にみてみると、30~50代はこの約30年で3万円以上も減る一方で、20代の減り幅は約1万5000円です。つまり若者はほかの年代にくらべて、消費をしなくなって「いない」層なのです。