スイーツには「いいね」、「嵐」みたいに仲良し

この市場は依然として過小評価されています。昨年、ある大手企業の幹部から新商品の相談を受けました。私は「女子力男子」の市場について解説したのですが、「でも女性向けの商品を使っているわけですよね。まあせいぜい『男でも使えます』などと包装にひとこと足せばいいのでは」という反応でした。これも典型的な誤解です。

大事なポイントは「女子力男子」は、現状に満足しているわけではなく、女子向けの商品を仕方無く買っているだけなのです。「女子力男子」の多くは化粧水などの基礎化粧品を愛用していますが、悩みや不満を抱えています。男性向けは「刺激や香りがキツい」、一方で女性向けは「男が使っても違和感がないか、わからない」。彼らに向けた商品作りをすれば、新市場が拓けるはずです。

こうした「男子の女子化」の背景にあるのは、経済的要因による男女の役割の変化です。

日本経済が成長期を終え、成熟期に入ったことで、時代の空気全体が柔らかになりました。男性型の「競争社会」から女性型の「協調社会」になったとも言えます。女子力男子が急増した「ゆとり世代」は1987年生まれより下の世代。この世代の男子は、同性にも異性にも虚勢を張ることが少なくなっています。

世代は少し上になりますが、象徴的な事例が男性アイドルグループ「嵐」です。メンバーの櫻井翔さん(82年生まれ)は「放課後にクラスの黒板の横でバカなことばかりやっている男子を、遠目で女の子が笑って見ている感じ」と表現しています。彼らの今っぽい男子同士の自然体での仲の良さが、男女を問わず広く受け入れられる理由でしょう。

さらにソーシャルメディアの普及も理由のひとつに挙げられます。若者にとってのソーシャルメディアとは、何かを議論する男性的な場ではなく、押しボタンの「いいね!」が象徴するように、皆で共感しあう女性的な場です。「いいね!」が集まりやすいのは、観光地やファッション、スイーツなどの写真。そうした女子のやりとりが目に入れば、流行に対する関心や知識も増え、「俺もやってみよう」と写真を載せる男子も出てきます。つまりソーシャルメディアが普及するほど、「女子化」が進むのです。