同じ現象はアジアの若年男性にも広がっており、経済発展や都市化の進展と密接な関係があります。

私の実感では、「女子力男子」の多い都市は、第1陣が東京、それに次ぐ第2陣がシンガポール、台北、香港、第3陣が上海、ソウル、クアラルンプール、第4陣がバンコク、第5陣がジャカルタ、マニラなどです(※2)。第5陣はまだ従来のマッチョ志向の男子が主流の段階で、女子にもか弱い印象がありますが、確実に「女子力男子」は増えつつあります。

いまアジアで最も「女子力男子」が多い日本で、そこに向けた商品開発を進めれば、やがて成長しはじめる「アジアの女子力男子」という巨大市場を狙えるはずです。

私の仕事は、経済成長を知らない世代の変化を分析することです。若者研究はこれまで先行世代が参考になりました。バブル世代を分析するには、団塊世代を参考にすればよかった。ところが日本経済が成長期から成熟期に変化した90年代から、過去のマーケティングは通用しなくなりました。そうした若者の消費行動の変化を、私は「さとり世代」や「マイルドヤンキー」といった概念で分析してきました。「女子力男子」は、一連の野太い流れをとらえたキーワードです。すぐに勢いを失う流行ではないのです。

※1:たとえば1990年に流行語大賞で新語部門・銅賞を受賞した「オヤジギャル」がその典型例。中尊寺ゆつこのマンガ『スイートスポット』からきた言葉で、バブル全盛期、オヤジの領域だった居酒屋、競馬場、パチンコ店などに堂々と出没する女性が現れた。
※2:『女子力男子』では、第五陣として、ジャカルタ(インドネシア)、ホーチミン(ベトナム)、マニラ(フィリピン)、プノンペン(カンボジア)、ヤンゴン(ミャンマー)があげられている。

(神田桂一=構成)
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