「英語」のメリットで東欧から移民が急増

イギリスの国民投票で「EU離脱派」が勝利しました。私自身は「いつか『性格の不一致』でEUと離婚する」と考えていたので、「ついにその時が来たか」という思いです。イギリスにとってはEUという単一市場があれば十分で、それ以上の統合は苦痛でしかなかった。しかし、EUとの新関係の目処もなく、「離脱」が先行するとは予想外でした。

私は40年ほど前から、三菱商事の調査部門の仕事でヨーロッパを飛び回っていました。そのうちフランスには5年、ドイツでは3年の駐在経験もあります。1993年に発足したEUの前身である「EC(欧州共同体)」、さらにその前身である58年発足の「EEC(欧州経済共同体)」の拡大も、間近で見てきました。わずか6カ国から始まった欧州の統合は、現在、EUとして28カ国にまで広がってきました。それは壮大な社会実験であり、欧州経済の飛躍の歴史です。統合がもたらしてきたメリットは計り知れません。

ただし、EUにおけるイギリスは、経済規模こそ2番目に大きいのですが、中心とはいえません。イギリスがECに加盟したのは1973年。その後、ユーロが導入されても通貨統合をせず、ポンドを使い続けてきました。私は一昨年までイギリスにある帝京大学ダラム分校で校長をしていましたが、あらためて「イギリスはヨーロッパになりきれない国だ」と感じました。ドーバー海峡は狭いけれど、ヨーロッパ大陸は遠い――。それが私の実感です。