独仏などが、ヨーロッパという枠組みで経済や外交を考えるのに対し、イギリスは伝統的にヨーロッパ、アメリカ、そして「コモンウェルス」という3つのサークルで考えます。

コモンウェルスとは、カナダやオーストラリアのようなかつての植民地で、経済や文化だけでなく、ラグビーなどのスポーツ交流も盛ん(※1)。 イギリスにとって貴重な「友人」です。

またアメリカには非常に強い親近感を持っています。自分たちの祖先が作った国であり、先輩という意識があります。安全保障に関しても、これほど頼れる「パートナー」はいません。ただし「英米関係は特別だ」というのは英国の片想いです。米国にとって英国は同盟国のひとつにすぎません。

これに対し、ヨーロッパとの間には微妙な距離があります。イギリスは自由主義を重んじ、伝統的に「小さな政府」を志向しています。一方、ドイツやフランスは社会民主主義的で、規制も多くみえます。

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EU拡大とイギリスの歴史

働き方をめぐる環境も大きく違います。フランスは週の労働時間が35時間以内で、原則として残業は禁止です。労働組合の権限は強く、社会保障の企業負担も重い。OECDのまとめによると、独仏の年間労働時間は1450時間程度なのに対して、イギリスは1650時間程度と大きな差があります。

さらなる脅威が移民の流入です。EU域内の労働者は働く国を自由に選べますが、新しい加盟国は加盟後7年まで労働移民が制限されています。04年に加盟したポーランド、07年に加盟したブルガリア、ルーマニアから、この数年、大量の労働移民がEU域内の先進国に流れ込んでいます。特に英語の使えるイギリスは労働移民に人気の国でした。

今回の国民投票では「労働移民の制限」が大きな論点でした。「離脱派」のイギリス人は、「これ以上、外国人に職を奪われたくない」という気持ちがあったようです。たしかにイギリスの経営者からは「イギリスのlazy(怠け者)な若者よりも、東欧のhungry(貪欲)な若者を雇いたい」という話を聞きます。