6月23日、EU離脱派が勝利を収めたイギリスの国民投票。橋下徹氏は投票1週間前からイギリスに滞在して、「離脱」「残留」両派の声を取材した。大阪市長として「大阪都構想」の是非を問う大規模な住民投票を行った経験のある橋下氏が、「英国EU離脱」という歴史的大事件をどう見たか。公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.13(7月5日配信)の一部をお届けする。

EU問題は「東アジア共同体」構想に置き換えると考えやすい

今回のイギリスの国民投票を日本人が論じるには、日本のことに置き換えて考えると分かりやすい。国民投票を否定して議会制民主主義が重要だというなら、永田町の国会議員の判断をそんなに信用できるのか。国の重大な方針をすべて国会議員の判断に委ねるのか。日本では、憲法改正においては国民投票を求めている。

離脱という選択は間違っているというなら、かつて旧民主党の鳩山由紀夫さんが熱心に提唱していた日中韓が一つにまとまる「東アジア共同体」構想を考えるとよい。日中韓が外交的に良好な関係を築くことは当然としても、共同体まで目指すのか。中国人がパスポート審査なしで、どんどん日本に入ってきて、自分たちの街に大量の中国人が住んでいる状況。彼らは日本人と異なるマナーで生活し、そして安い賃金で働いている。こんな社会を想像してみてよ。

東アジア共同体による単一市場化によって企業が活動しやすくなったとしても、僕はそんな日本は嫌だね。企業活動だけが重要なんじゃない。現実の暮らしがもっと重要だ。

もし僕より若い世代が、日中韓・東アジア共同体構想を進めたいというなら、進めてもらって構わない。若い世代の意思を尊重したい。そしてそのような構想が進む中で生まれてくるさらに若い人たちは、東アジア共同体に違和感を覚えず賛同するだろう。でも、僕は違う。「俺の目が黒いうちは、日本を感じるところは残しておいてね」と言うだろうね。僕もあと30年くらいの人生。その間にどんどん日本がなくなってしまうことには危機感を覚えるだろうね。だから若い世代の意思を尊重しつつも、東アジア共同体構想がある一線を超えれば、僕は離脱派になる。

そのときに、離脱という判断はポピュリズムだ!! 感情的だ!! と言われたら頭に来るね。さらに企業活動がおかしくなって経済が停滞する!! と言われても、経済だけを考えるな、バカ、と言い返すだろうね。なぜ離脱なのか、冷静に論理的にいくらでも主張できる。東アジア共同体構想のおかしいところをいくらでも指摘できるし、東アジア共同体残留派を論破できる自信がある。

にもかかわらず、東アジア共同体離脱の主張は、感情的で非合理的なのか? 論点は何で、双方の主張の合理性はどうなのか。ここを徹底的に吟味しなければならないのに、離脱派の主張はポピュリズムだ!! で片づけられたらたまったもんじゃないよ。